『ジョーカー2』ホアキン・フェニックス&監督インタビュー。「彼は自分の分身を、マスクをどう扱うのか?」
ホアキン・フェニックスが主演を、トッド・フィリップスが監督を務める問題作『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』がついに11日(金)から公開になる。本作は、2019年製作の『ジョーカー』の“その後”を描いた作品だ。 【画像】『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』の写真 映画『ジョーカー』は、これまで数々のバットマン作品に登場してきた宿敵ジョーカーを基にしているが、スクリーンに登場したのは我々の知っている悪役ではなく、哀しい中年男性だった。 一流のコメディアンになることを夢見るアーサー・フレックは、孤独と苦境の中であえいでいたが、ある日に銃を手にしたことで変貌を遂げる。彼はピエロのメイクをして自らを“ジョーカー”と名乗り、殺しを重ねていく。彼の行動は連日報道され、彼の支持者・信奉者が街のいたるところに出現。最終的に彼は捕えられ、病院に送られるが、人々の心の中にはピエロメイクの男の姿が刻みこまれた。 「あの映画でアーサーを演じながら、これで終わりじゃない、まだこのキャラクターで伝えられることがあると思っていた」とフェニックスは説明する。本作の演技で彼はアカデミー主演男優賞に輝き、本作の評価はさらに上昇していった。スタジオはすぐさま続編を望んだが、フェニックスには“ひとつのアイデア”しかなかったという。 「次の映画は女性のキャラクターが登場する恋愛映画で、彼女は“アーサー”を愛しているのか? それとも“ジョーカー”を愛しているのか? が描かれる。彼女からの愛をアーサーはどのように扱うのか? それが持っていた唯一のアイデアでした」 新作『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』では、アーカム州立病院にいるアーサー・フレックが病院内で囚人のリー・クインゼルと出会うところから物語が始まる。“ジョーカー”の行動や考えに共感し、好意を寄せるリーと、自分に好意を寄せてくれる女性の出現に心を動かされたアーサーは距離を縮めていく。 興味深いのは、アーサーの高まる気持ちとドラマを表現するために、フィリップス監督が前作以上に大胆な方法で音楽を使ったことだ。 「前作はホアキンと話し合いながら映画をつくりましたが、その時から僕は繰り返し“アーサーの中には音楽がある”と言ってきたんです」とフィリップス監督は振り返る。 「前作ではアーサーが踊る場面で彼の中に流れる音楽が表現されています。ですから、本作の音楽の使い方は自然な流れだったと思います。愛を見つけたと思ったアーサーが自分の気持ちを歌で表現する。クレイジーな飛躍だと思う人もいるかもしれませんが、僕の中では成立していました」 そこでフィリップスは、レディ・ガガにリー役をオファーした。彼女はシンガーソングライターであり、俳優でもあるが「普通に考えたら、ホアキンと同じ画面の中で演技をするのは不利と思われるかもしれないですよね」と笑みを見せる。 「でも、彼女は俳優として本当に素晴らしかった。僕が最も驚いたのは、彼女が“もろさ”を表現できる俳優だったこと。リーを演じる上で重要なことですが、彼女はそれを簡単に成し遂げた。それは驚くべきことでした」 心に哀しみ、痛みを抱えたアーサーとリーは向かい合い、喜びは音楽になって世界を埋めつくす。しかし、思い出してみてほしい。アーサーは本当に愛されているのだろうか? かつて彼は同じような勘違いをしていなかったか? 「少し簡単すぎる言い方になってしまいますが、前作のアーサーは救済を求め、愛を探していたけど、その解釈を間違えてしまったんです」とフェニックスは言う。 「彼は人とのつながりを求め、人からの愛を求め、同時にコメディアンとして賛辞を受けたかった。でも、子どもの頃から愛情を受けてこなかった彼は、コメディアンとしての賛辞、ジョーカーに集まる賞賛を“自分に注がれるはずの愛”と置き換えてしまったんです」