吉田鋼太郎、木南晴夏…ヘンテコだけど懸命なクセキャラだらけ『映画おいハンサム!!』
大人気テレビドラマ『おいハンサム!!』が、映画化され、現在全国映画館で公開されている。この作品は、伊藤理佐による漫画『おいピータン!!』シリーズや『渡る世間はオヤジばかり』といった作品を原作としており、伊藤家の5人が織りなす恋と家族とゴハンをめぐる物語だ。シーズン1が2022年に放送され、シーズン2が2024年に放送された。 【写真】映画化された人気作品『おいハンサム!!』 『おいハンサム!!』は、東海テレビ制作フジテレビ系列の『牡丹と薔薇』や『真珠婦人』といった、昼ドラの系譜を受け継ぐ土ドラ枠ではあるが、実は昼ドラ枠を含めても、貴重な映画化。 土ドラ枠でシーズン2が制作された例としては、真矢ミキ主演の『さくらの親子丼』や現在放送中の『ギフテッド』など、いくつかあり、『おいハンサム!!』もそのひとつである。 土ドラ枠としては、『リカ ~自称28歳の純愛モンスター~』(2019)に続いて、記念すべき映画化2作目となるが、良い意味で映画化には適していない作品ともいえる。 その理由は、劇場というより、家でなんとなく観ていたいドラマであるからだ。 ただ、お金を払ってでも伊藤家とそれを取り巻くクセの強い人々に会いたいと思わせているだけで成功したといえるだろうし、何度も観たくなり、何度も発見のある作品となっている。 もちろんドラマを観ていなくても、映画から入るのも問題ない。逆に知らない方がキャラクターの個性の強さに引き込まれるかもしれない。そこからドラマに入るのも良いだろう。 よく、悪い意味で邦画に対して”ドラマの延長線上”という言い方がされるが、今作においてはそれが良い。というよりも、そうでなくてはならない作品。 冒頭からドラマそのままに、ユルい展開がはじまり安心する。映画版だけのキャラクターも何人か登場するが、邪魔にならない程度に爪痕を残していくのだから、空気感は全く壊されない。
食事のシーンに重要性を置いている
『おいハンサム!!』が凄いところは、日常的な物語でありながら、少し変でクセはあるのだが、不条理で固定概念に縛られた現代で闘って生きている等身大の人間であるという、絶妙な匙加減で描かれるキャラクターたちである。 吉田鋼太郎という個性的な俳優だからこそ演じることができる主人公・伊藤源太郎は、頑固で破天荒のように見えて、実は一番の常識人で、どの世代にも突き刺さる名言を炸裂させる。ときには煙たがられることもあるが、その言葉ひとつひとつが実は人生に必要な教訓となっている。 娘たちや妻も個性的で、それぞれがおもしろく、そしてそれぞれが何かしらの苦悩を抱えている。 そして主人公一家だけではなく、それを取り巻くサブキャラクター、サブザブキャラクターたちが活き活きとしており、それぞれに存在感があって、スピンオフを作れそうなキャラクターが満載。 例えば長女・由香の元カレ大森は、食いしん坊キャラであることから食への拘りが強く、食を通して色々と明言を残すし、大森の同僚の渡辺は真面目キャラでありながら、真面目であることがおもしろく、そしてどこか変。三女・美香の先輩・シイナも適格なアドバイスをしてくれるがそれがおもしろい。そして変。そんなキャラクターたちがクロスオーバー的に出会うことで生まれる化学変化も楽しみのひとつだ。 シーズン2に直結する物語となっているのも嬉しい。シーズン2で描かれてきた次女・里香の大食いキャラが活かされたエピソードになっている。 シーズン1で夫の不倫が原因で離婚した里香だが、シーズン2では、妻のいる原(藤原達也)に恋心を抱いてしまったことへの葛藤が描かれてきた。しかし会社と同じビルで働いていることもあり、顔を合わさずにはいられない状況から逃げるように京都へ。そこで再開した幼馴染との物語が中心となっていくわけだが、ここでも家族全体にエピソードが詰まっていて、構成のバランスが良いのだ。 『ランチの女王』や『不機嫌なジーン』など、平成を代表するドラマをいくつも手掛けてきた山口雅俊がドラマシリーズ含め、監督・脚本を務めたからこその安定感だ。 山口監督がシリーズを通して、食事のシーンに重要性を置いているのも注目すべき点である。 食事とは、その人の性格や家庭環境、生活習慣などを映し出すことができる身近な行為ということもあり、あえてどこの家庭にでもある食事を印象的に映し出すのだ。 それによって、ただでさえ個性的なキャラクターたちの個性を、さらに浮き彫りにしている。 見所が満載で頭からつま先までおもしろさが詰まった『おいハンサム!!』シリーズ。 まだまだ描くべきことや余白を残しており、こんなところで終わってもらっては困るため、シーズン3以降の制作もすぐにしてもらいたいところだ。 【ストーリー】 伊藤源太郎(吉田鋼太郎)は家族の幸せを願う、ちょっとウザいけど強いパパである。長女・由香(木南晴夏)は仕事は絶好調、恋愛は絶不調、ダイエット中でお腹もペコペコ。次女・里香(佐久間由衣)は浮気されて離婚したのに『好きになってはいけない』原さん(藤原竜也)を『たぶん好き』になってしまう。三女・美香(武田玲奈)は婚約者と『たぶんダメな感じ』。 ある日、妻・千鶴(MEGUMI)からショッキングな告白をされた源太郎は、テレビに出演して不規則発言を連発。由香は知らない男からの間違い留守電メッセージを心待ちにするほどロンリーで、『男は見た目』という理由で別れたはずの大森(浜野謙太)を思い出してしまう始末。里香は原さんからの逃亡を決めた『恋愛疎開』先の京都で、幼なじみのたかお(宮世琉弥)と再会。美香は、声をかけてきたノリのいいイサオ(野村周平)やスグル(内藤秀一郎)の猛烈なアプローチを断れず悩む……。 【クレジット】 脚本・監督:山口雅俊 出演:吉田鋼太郎、木南晴夏、佐久間由衣、武田玲奈、MEGUMI、宮世琉弥、野村周平、内藤秀一郎、須藤蓮、浅川梨奈、光宗薫、藤原竜也(友情出演)ほか 原作:伊藤理佐 『おいピータン!!』『おいおいピータン!!』(講談社『Kiss』連載)Special Thanks:『渡る世間はオヤジばかり』(講談社 KissKC 所載)ほか 製作:映画『おいハンサム!!』製作委員会 配給・宣伝:東宝 (C)2024映画『おいハンサム!!』製作委員会 6月21日(金)全国ロードショー 【あわせて読む】ドラマ『おいハンサム!!』が東京ドラマアウォードで「優秀賞」に、個性的なキャストが話題
バフィー吉川