<抹茶>の長期摂取で社会的認知機能の改善・睡眠の質の向上へ<最新研究レポート>
栄養豊富で美容や健康に効果があるとされる抹茶。高齢者が抹茶を長期間飲み続けたところ、新たな効能があることが判明したという。バイオベンチャー企業が行った共同研究の内容をお伝えする。 【画像】研究レポートの図表を見てみる
知られざる抹茶の魅力とは
コーヒーやお茶の成分として知られている「カフェイン」。頭をすっきりさせたり、眠気を覚ます効果が期待できる反面、眠気を抑制し覚醒する作用があるため、寝つきを悪くしたり、途中で目覚めやすくなるなど睡眠を妨げる作用があると言われている。 しかし、抹茶はカフェインを含んでいるにもかかわらず「睡眠の質」に悪影響はなく、むしろ改善傾向が見られた他、高齢者の認知機能の一部に効果があることを確認したという。 今回は、予防医療を推進する筑波大学発バイオベンチャーMCBIが、筑波大学、メモリークリニックとりで、伊藤園と共同で行った研究を紹介する。
抹茶摂取による社会的認知機能・睡眠への効果を検証
抹茶の主成分「テアニン」には、ストレス緩和、睡眠改善、さらにはワーキングメモリー(※1)の改善などの効果があり、「カテキン」には、血中コレステロールの低下、体脂肪の低下、さらにはワーキングメモリーの改善などの効果があることが報告されている。 今回の研究で、高齢者を対象に抹茶を1日2gずつ12か月間継続摂取したところ、他人とコミュニケーションをとる上で必要と言われる「社会的認知機能(顔表情からの感情知覚)」と「睡眠の質」への効果が確認されたという。 研究グループは、認知症の前段階である軽度認知障害および主観的認知機能低下(※2)と診断された60才~85才の高齢者99人を対象に、抹茶の長期摂取による認知機能などへの影響を検証した。 試験食品は、抹茶群では抹茶2gを充填したカプセルと、有効成分が入っていない着色コーンスターチを充填したカプセルをそれぞれ使用。抹茶2gは、薄茶お点前一杯相当量にあたる。 参加者は、テストの前後にパソコンを用いて文字の色と意味が合っているか判断する「ストループテスト」、同じ形や色を選ぶ「注意シフトテスト」、特定の文字でキーを押す「持続処理テスト」、感情の表現を一致させる「表情認知テスト」の4つの認知機能検査を実施し、抹茶の効果を総合的に解析した。 結果、表情認知テストにおいてパソコン上に表示された顔の表情を見て、「幸せ・怒り・穏やか・悲しみ」といった感情を読み取る知覚の精度が有意に改善することが確認された。 また、睡眠の質について自記式で回答してもらったところ、睡眠の質が向上する傾向が示され、試験結果は8月30日の学術雑誌PLOS ONEにも掲載。注目が集まった。 今後、研究グループは「社会的認知機能」の改善効果やそのメカニズムの解明、「睡眠の質」との関連性など、高齢者にとって有益な活用方法の提案を目指すとともに、お茶の価値を科学的に捉えて「人生100年時代を豊かに生きる」ための生活改善の提案を続けていくという。 緑茶・抹茶は、日常的に摂取でき、多くの高齢者にとって身近な存在である。自治体やコミュニティで行われている認知症予防プログラムなどに活用されることが期待される。 高齢化が進み、年々患者数が増えつつある「認知症」。予防のためにも毎日の生活習慣を改善し、効果が見込める食生活を送りたい。 (※1)外界から入ってきた感覚情報などを一時的に記憶し処理する能力のこと (※2)軽度認知障害(MCI)の前段階で、客観的には認知機能の低下は認められないが、物忘れの自覚がある自分だけが気づいている段階。 【データ】 MCBI https://mcbi.co.jp ※MCBIの発表したプレスリリース(2024年9月2日)を元に記事を作成。 図表/MCBI提供 構成・文/松藤浩一