「あの時電話をすれば」「悲しみは消えない」九州豪雨4年追悼式、遺族ら犠牲者悼む
2020年7月の九州豪雨から4年を迎えるのに合わせて、30日に熊本県人吉市主催で営まれた追悼式で、参列した遺族ら30人が犠牲者のことを思った。今も癒えない悲しみを胸に、復興への誓いを新たにした。 【写真】追悼式であいさつする木村知事
九州豪雨では、氾濫した球磨川流域を中心に県内で災害関連死を含む67人が犠牲になり、2人が行方不明となっている。市内では21人が亡くなった。
市庁舎で式典があり、全員で黙とうをささげた。松岡隼人市長が式辞で「二度とこのような悲劇に見舞われることのないよう、残された者の責務を果たしていく」と述べ、被災者の住宅再建や河川の治水対策を推進する決意を示した。
4月の就任後、初めての参列となった木村知事は「一日も早い復旧、復興と安全安心の実現に向けて決意を新たにしている」とあいさつ。7月6日までの1週間を「くまもと防災ウィーク」に定めたことにも触れ、「県民が防災について改めて考える機会にしていただきたい」と述べた。
避難時に濁流に流されて亡くなった国本一さん(当時80歳)、洋子さん(同79歳)夫妻の長女、鍜治屋博子さん(61)(合志市)は、亡くなった2人を思い出す時間にしたいと参列した。
鍜治屋さんは日頃、雨の前には両親に注意を促していた。4年前のあの日、豪雨の2日前に一度電話したからと、改めて連絡は取らなかったという。「あの時、電話をすれば良かった。今でもそればっかりです」と悔やんだ。
両親の西橋欽一さん(当時85歳)、恵美子さん(同82歳)を亡くした西村直美さん(55)(北九州市)は「4年という時間がたっても悲しみは消えない」と言葉を詰まらせた。今年も各地で大雨が降っていることに触れ、「『自分は大丈夫』と思わずに、ハザードマップを見るなどして災害の心構えを持ってほしい」と呼びかけた。
今年は、豪雨で被災した八代市と芦北町、球磨村が追悼式の開催を見送った。式典後に報道陣の取材に応じた松岡市長は「記憶を風化させないために継続していきたい」と来年以降も開催する意向を示した。