声優・アーティストの大渕野々花に聞くデビューシングルへの想いとデビュー秘話‐決心をしたのは就活で「本当にこの仕事でいいの?」と言われたから
デビュー曲は「Neruさん節によるいろいろな曲調のフルコース」
◆そうして小さい頃からの夢を自らの手でつかんだ大渕さん。5月22日にはデビューシングル「朱く染めて心臓」がリリースされます。 先ほどもお話しましたが、「朱く染めて心臓」は私が小学生の頃から聞いていたNeruさんに作詞・作編曲をしていただいた曲なんですよ! もう随所にNeruさんを感じられて、最初に聞いたとき、すごく感動しました。私個人としてもとても好きな曲調の楽曲で、テンションも上がりました。 ◆TVアニメ『怪異と乙女と神隠し』のエンディング主題歌でもある本作。改めて、どのような楽曲になっているのか教えてください。 サビはこれぞNeruさんというロックチューンでありながら、スカ(Ska)要素や昭和歌謡のようなメロディだったり、いろいろな曲調のフルコースをNeruさんならではの視点で詰め込んでいただいた、みたいな曲ですね! 歌詞はTVアニメ『怪異と乙女と神隠し』に寄り添いながらも、報われない恋の歌としても聞くことができるんです。いろいろな楽しみ方ができて、誰かの「好き」に引っ掛かる曲に仕上がっていると思います。 ◆実際にレコーディングしてみて、どうでしたか? ソロとしてのレコーディングは初めてで。緩急などを含めて、ぜんぶ自身の歌で構成していかないといけないんですよね。私の先入観や歌い癖で取り組んでしまうと、曲の印象がガラリと変わってしまうので。実際、最初は歌謡曲感に引っ張られて、大人っぽく歌ってしまったんですが、「もう少し少女らしさが欲しい」というディレクションがありまして。その場で試行錯誤しながら、今の形になっていきました。 ◆アニメの放送もスタートしています。実際にご覧になってみた感想を教えてください。 漫画とは違った、アニメならではの視覚的・聴覚的な表現や効果が散りばめられていることに感動しました。漫画って能動的に自分のペースで読み進めることができるじゃないですか。だから、めくるドキドキがあるんですよね。一方でアニメなどの映像作品だと受動的にハラハラ感を浴びせられて、ぞわっとする。アニメ化されたことによって能動的にも受動的にも本作を楽しめるようになったのが、うれしくてたまらないですね。 ◆EDで自身の曲が流れたときは、どんなお気持ちでしたか? 最初はあまりにも現実味がなくて、他人事でした。流れてもなお、実感がなかったんです。それくらい自分にとって夢のような出来事で……。徐々にその幸せ、喜びをかみ締めています。 ◆デビューシングルには他にもいくつかの楽曲が収録されています。そのひとつが「夢.jpeg」。 「夢.jpeg」は小林私さんに作詞・作曲、sugarbeansさんに編曲いただいた曲です。実は私、お二人の楽曲が大好きで。それをプロデューサーさんにお話したら、このような形で曲を作っていただけることになりました。本当にありがたい限りです。とてもジャジーで、セッション感あふれるサウンドになっています。クレジットからどういう楽器が使われているのか拾い上げていただき、セッションしている様子を思い描きながら聞いてもらえたらうれしいですね。歌詞は小林さんワールド全開。小林さんとは制作前に一度ご挨拶を兼ねて打ち合わせをさせていただきまして、私の好みのソングライティングをヒアリングして書いてくださったので、すごく馴染みます。 ◆デビューシングルの直筆サイン入り限定盤にはもう一曲「終わらないストーリー」が収録されています。 この曲は「犬コン!」のNExTアーティスト部門で特別賞を受賞したイナツさんに作っていただきました。私のこれまで、そして今を描いた楽曲です。サウンドはイナツさんが得意としているであろうパンキッシュで、力強いドラムが印象的です。そこに繊細できらびやかなストリングスが加わることで、少し切なさも感じられるんですよね。まさに「犬コン!」を受けているときの私の気持ちにぴったりな曲に仕上がっています。 ◆一方のアニメ通常盤には、「一生分の星と逃げる」が収録されています。 作詞・作曲は傘村トータさん、編曲は堀江晶太さんと、とんでもない布陣で作っていただいた曲です。夜空って、吸い込まれるような濃淡がすごく重たくも美しいという印象があって。ただ、星々が輝くきれいな星空として捉えると、キラキラで軽やかという印象になるんですよね。丁寧に扱うべき重たい感情の歌詞と、サウンドのきらびやかさが両立するこの曲は、まさに夜空の二面性が出ている曲だなと思っています。澄んだ音の曲なので、都会で聞いたとしても、その場が瞬時にきれいな高原になるんじゃないかな! ◆各楽曲の紹介ありがとうございました。まだデビューしたばかりではありますが、今後はどういう活動をしていきたいですか? いただけるものは幅広く何でもやっていきたいです。今回のシングルでいろいろな方向性の曲を歌わせていただきましたが、歌うたびに新たな自分と出会いました。自分の想像の至らないことって、まだまだたくさんあると実感したんです。だから、役者としてもアーティストとしても、自分がやりたいことを決めるのではなく、いただいたお話を素直に取り組んでいきたいですね。アーティストとしては、フェスみたいな、初めましての方が多い場所でライブをしてみたいです。自分の力がいろいろと試される場所に赴いてみたい。なんか、戦闘民族みたいですね(笑)。 ◆フェスは戦いだとおっしゃっているアーティストの方もいらっしゃいます。 私もバンドマンの方が言っているのを聞いたことがあります! それを聞いて育ったので、同じような場所に立ってみたいという気持ちがあるのかもしれません。 ◆本日は貴重なお話ありがとうございました。最後にお聞きします。大渕さんにとって演技・音楽とは? 自分と向き合う場所……というより、向き合わされる場所ですかね。やればやるほど、自分でもよく分かっていなかった自分を発見するんです。演技と音楽のおかげで、自分が浮き彫りになったり、変わっていくところもあったり。気づかされることばかりです。安らげる場所のはずだけれども、気が抜けない場所でもあって。家のようでもあり、戦場のようでもある。今の私にとっては演技と音楽は、自分と向き合わされる場所ですね。 <PROFILE> 大渕野々花 ●おおぶち・ののか…3月13日生まれ。埼玉県出身。A型。身長147cm。小学校から高校時代にかけてドラマやバラエティに出演し、歌唱オーディション番組でも入賞を経験。大学時代には舞台への出演や、ABEMA・BS 朝日で学生キャスターを務めるなど、マルチな才能を発揮する。2022年にフライングドッグ主催オーディション「犬コン!」で特別賞を受賞し、声優・歌手としての活動をスタート。2024年4月放送のTVアニメ『怪異と乙女と神隠し』にてエンディング主題歌を担当する。 ●photo/YOSHIHITO_SASAKI text/M.TOKU
M.TOKU