腕まくりをした大谷の二の腕の筋肉が盛り上がっていた。明らかにプロ3年目を迎える20歳の肉体は変化している。その肉体の成長に合わせて、技術も同時にアジャストしていかねばならないが、そこが難しい。 　世界のトップアスリートでさえ難しい作業であって、ピッチングの方では、さすがの大谷も、その摺り合わせの作業に時間がかかった。だが、栗山監督いわく「バッティングに関しては賢い」ため、その肉体の成長をうまくバッティング技術にアジャストできているというのである。 　さらに栗山監督を驚かせたのは、左中間フェンスを直撃した打球だった。キャスター時代の栗山監督を驚愕させた2011年夏の甲子園、帝京戦での外角低めのストレートを捉え、レフトフェンスをライナーで直撃した一打の記憶が蘇ったという。 「夏の甲子園で度肝を抜かれた打球に近いものがあった。今後、打たせないと相手が考えてくるところで、どう打つかを意識した、先を見据えた打ち方に見える。しっかりと呼び込み、しっかりと振っているから、自然と逆方向に打球が飛んでいる」 　つまり2年の経験を経た大谷が、チャンスで厳しい攻めをされてきた場合を想定した勝負強さを求めるバッティングに取り組んでいると、テーマを読み取ったのである。 　 　昨季までの大谷は、登板翌日の野手出場は休養となっていた。だが、栗山監督は今季“中ゼロ日”での出場プランも暖めている。まだキャンプは2日を過ぎたばかりだが、そのプランに耐えられるかどうかの見極めも始まっていて「一日（ピッチャーとして）動いて体に張りも出ている中、今日は、どうかなと見ていたが、疲れても（バッティングは）良かった」と、栗山監督は、3年目で肉体的な耐性もついてきたのではないかと見ている。 　そうなると昨季は52試合の先発だった「バッター・大谷」の出番は増え、昨季11勝＆10発の二刀流成績を残した大谷の「15勝＆20発」という数字が、いよいよ現実味を帯びてくるのかもしれない。 　（文責・本郷陽一／論スポ、アスリートジャーナル）