【有元葉子さんおすすめの宿】「客の顔触れに合わせて食材を調達」また行きたくなる長野の宿
日々、献立を研究する料理家のみなさんが、実際に泊まって心に残った宿を教えていただきました。宿の主人と料理人が地元の食材を探し回り、味わいを最大限に引き出した、まさに"ご馳走"。そんな口福の記憶を刻みたい宿と、そこで出会った滋味。彼女たちの言葉のなかから、「記憶に残るおいしさ」に対する多くのヒントが見つかります。 今回は、料理家の有元葉子さんおすすめ、四季折々の料理が思い出されてまた行きたくなる「ペンション竜の子(たつのこ)」です。
その日の客の顔触れに合わせて食材調達。旬の海の幸もメニューに入ります─有元さん
年に何度か、東京を離れて野尻湖の家で過ごすのですが、客人があると紹介するのがこちらの可愛らしい宿です。野尻湖の家を建てていたころ、おいしいご飯を食べられると知ってファンになりました。 リピーターが多く、その日の客の顔触れに合わせてオーナーの中原武子さんが食材を調達されます。ある年の春に食べたのが、どっさりと花山椒をのせたすき焼き。毎年、春になるとそのおいしさがよみがえり、そんなご馳走が季節ごとにあって、また行きたくなります。 ここは日本海に近く、海の魚の料理もいい。近隣の魚卸店では新鮮なのどぐろも手に入るので、私も活用させていただいています。 近くに暮らす陶芸家の山中恵介さんは料理上手で、中原さんのキッチンを時折手伝っているのですが、おふたりの様子を見ると、親しい仲間と一緒に料理をして、お客と分かち合うのもいいなと思います。(談) 〈写真〉暖炉のあるダイニング。
脂の乗ったのどぐろはソテーに。
からすみのパスタ。夕食は前菜からデザートまで6品ほどで構成。
作家のC・W・ニコル氏が自然保護活動を進めた「アファンの森」が近いことから同氏の定宿となり、蔵書が残されています。
【ペンション竜の子】 長野県上水内郡信濃町野尻3884-691 一泊2食付き1名料金16,500円~(サ込) IN15時 OUT10時 全9室 おすすめしてくださったのは… 有元葉子さん●和・洋・エスニックなど、家庭で再現できる洗練されたシンプルな料理が幅広い層から支持されている。野菜をたっぷりとれるレシピのほか、おせちなど季節のレシピも人気が高い。イタリア・ウンブリアの別邸での洗練された暮らしぶりにもファンが多い。 撮影=前川明範 編集・文=平田剛三(婦人画報編集部) 『婦人画報』2024年6月号