国連「勧告」で分かった日本政府の独善的対応 成城大教授 森暢平
◇「典範」は条約に関係 スペイン人議長が指摘 CEDAWは今年10月17日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で、「最終見解」をまとめるための対日審査会合を開いた。23人の研究者、専門家からなる委員会が、さまざまな分野についての質問を投げかける場である。答えるのは、内閣府男女共同参画局長、岡田恵子ら代表団約25人。 キューバの法学者、ジャミラ・ゴンザレス・フェレールは「日本は、皇位の宗教的、文化的文脈を強調するが、条約で保障される原則に基き、男女平等実現のため日本政府に皇室典範改正を提案する」と発言し、内閣官房皇室典範改正準備室副室長、末永洋之は「CEDAWが皇室典範を取り上げるのは適当ではない」と反論した。 しかし、議長であるスペインの教育学者、アナ・ペラエス・ナルバエスは「CEDAWには、皇位継承の問題を取り上げる権限がないとする日本代表団の回答には同意できない。日本だけでなく、そのような差別的な法律があるすべての国に対して同様な質問をしている。私の出身国スペインもその一つだ。このトピックスは、直接CEDAWに関係する」と指摘した。 たしかに、CEDAWは19年8月、スペイン政府に対して、きょうだい内では男子を優先する継承法について、どのような改善策があるのか情報を提供するよう求め、23年5月の勧告では男女平等継承を求めた。条約批准にあたり、スペイン政府は王位継承を保留事項としていたため、その撤回を促したのである。スペインで議論が盛り上がらないのは、国王フェリペ6世の子どもが2人とも女性で、次代が王女になることがほぼ確実であるためだ。 ともかく国際社会の目は厳しい。しかし、日本政府は相変わらず鈍感である。今年10月24日ごろに明らかになった「最終見解」草案には、しっかり「皇位継承」が触れてあった。政府はジュネーブ代表部を通じて抗議するとともに、典範に関する記述を削除するよう申し入れている。その結果、10月29日に公表された「最終見解」には、「皇位継承問題は、委員会の権限の範囲外であるとする締約国(日本)の立場に留意する」という一節が挿入されてはいた。しかし、「CEDAWは、男系男子のみに皇位継承を認めることは条約の目的や趣旨に反すると考える。男女平等を実現した他国の優れた取り組みを参照しながら、皇室典範を改正するよう勧告する」との強い表現が盛り込まれた。