【御嶽山噴火】家族を探し続ける人、災害の教訓を伝え続ける人…それぞれが過ごした10年間 山小屋は登山者に啓発活動「今いる場所は火山の中。噴火したらどのように身を守る必要があるか、親身になって伝えたい」
壁には2014年9月のカレンダーが掛けられたまま。この空間だけは10年前のままです。
この日、宿泊していたのは新潟県から訪れた山岳会。初めて御嶽山に登るという人もいるなか、“あの部屋”にも目を向けます。「生々しい…自然の脅威だから」、「上から落ちてくるのを想像すればひとたまりもない」など、部屋を見た人々からこぼれる言葉。 “噴火のすさまじさを「自分事」として考えてほしい” そんな思いから、髙岡さんはこの部屋を残し続けています。
噴火後に初めて御嶽山に登り、この山小屋を復活させた髙岡さん。時が経つにつれ、登山者たちの“ある変化”を実感していました。「噴火を知らない方も、もちろんいらっしゃるし、ヘルメットを持ってくる必要性も全く考えていない。やっぱり10年という時間が経つと、人の記憶からは風化していってしまうのかなという印象はありますね」と話します。
髙岡さんがそんな思いを抱く理由のひとつが、必要な装備を身につけない「軽装登山」の増加。ヘルメットを持たず、なかには、スニーカーやサンダルで登ってくる人もいるといいます。
山頂近くの山小屋『二ノ池山荘』で支配人を務める小寺祐介さんも、髙岡さんと同じ思いを抱えていました。自らが撮影した当時の写真を登山者に見せ、啓発活動を続けている小寺さん。
「御嶽山がどういったものか、ちょっといまいち分かっていない方もいらっしゃるので。そういった方々にも、今いる場所が火山の中なんです、もし噴火したらどのように身を守る必要があるか、親身になってお伝えできればいいと思っています」と活動への思いを話しました。
御嶽山で、山小屋を営む責任。それは、山の魅力を発信すること。そして、噴火の教訓を伝え続けること。
髙岡さんは、「独立峰だからこその魅力ってあると思うんですよね。山頂に登れば、360度見える。天気が良ければ、富士山が見えて、中央アルプス、北アルプスってずーっと見えるわけですよ。独峰だからこその景色っていうのは楽しんでいただきたい」と御嶽山の魅力を語ります。
続けて、「まだ活動を続けているという“活火山”だということを考えていただきながら。火山だからこそ見られる、美しい風景はありますから。どちらも御嶽山の魅力として、感じていただければいいなと思います」と登山者への思いを語りました。