チャットGPTはお調子者!?
「ググる」から「ジピる」へ?~対話型AIの登場
対話型の人工知能(AI)「チャットGPT( ジーピーティー)」が爆発的な勢いで広まっています。2022年11月30日に公開されて以来わずか2カ月で、ユーザー数は1億人を突破しました(1)。若者に人気のソーシャルメディアであるTikTok(ティックトック)のユーザー数が1億人に達するのに約9カ月、インスタグラムは約2年半かかったことと比べても、チャットGPTの注目度の高さがうかがえます。 チャットGPTに質問を投げかけるとたちどころに回答を返してくれ、その反応の速さや流暢さに驚く人も多いようです。チャットGPTは、インターネット上の膨大な文章を読み込み、単語がどう並ぶかのパターンを学習しています。そのため、個々の単語の意味を理解した上で文章にしているわけではないのに、もっともらしい文章を作ることができるのです。チャットGPTに米国の医師資格試験を解かせてみたところ、特別な訓練を行わなくても合格または合格ラインに近い正答率だったという研究もあるほどです(2)。今後もさまざまな使い方が編み出されていくでしょう。 これまでわたしたちは、知りたいことがあれば、パソコンやスマートフォンでグーグル(や他の検索エンジン)のアプリを開いて検索してきました(今もそうしています)。インターネットで検索することを「ググる」と呼ぶようにもなりました。検索エンジンは確かに便利ですが、結果を順に閲覧して自分の知りたい情報を探す必要がありますし、ぴったりの情報にたどり着かないこともあります。その点、チャットGPTなら、対話をするうちに求める情報にたどり着くことができるかもしれません。チャットGPTと対話をすることを「ジピる」と呼ぶようになるかもしれません(?)。 もちろん、気を付けなければならないこともあります。チャットGPTの回答は、常に正しいとは限りません。にもかかわらずもっともらしいので、人間の側が回答の誤りに気付きにくくなり、ついそのまま信じてしまう恐れがあります。チャットGPTは今のところ、自分が学習したことをとりあえず答えてしまう〝お調子者〞と心得て、付き合っていく必要がありそうです。 チャットGPTの開発元であるオープンAIは、チャットGPTは資格を持った専門職による査読を受けずに健康や医療のアドバイスに使わないよう求めています(3)。そのため、病気の診断や治療に関する判断に使うべきではありません。いくら便利でも、医師や看護師などの代わりにはならないのです。 【文献】 (1)Hu K. ChatGPT sets record for fastest-growing user base - analyst note(Feb 1,2023). REUTERSウェブサイト(Accessed April 11, 2024) (2)Kung TH, et al. Performance of ChatGPT on USMLE: Potential for AI-assisted medical education using large language models. PLOS Digit Health. 2023; 2: e0000198, (3)Usage policies (Updated January 10, 2024) OpenAIウェブサイト(Accessed April 11, 2024) 北澤京子(きたざわ きょうこ) 医療ジャーナリスト 京都薬科大学非常勤講師 *『月刊糖尿病ライフさかえ 2023年8月号』「賢く付き合おう! 健康・医療情報」より