“澤田”関口メンディーをなぜ巨人に入団させたのか 『おむすび』のこだわり抜いた野球描写
NHK連続テレビ小説『おむすび』が現在放送中。平成元年生まれの主人公・米田結(橋本環奈)が、どんなときでも自分らしさを大切にする“ギャル魂”を胸に、栄養士として人の心と未来を結んでいく“平成青春グラフィティ”。 【写真】関口メンディーと佐野玲於の撮り下ろしツーショット 第11週でスランプから脱出した翔也(佐野勇斗)は、プロのスカウトも注目するピッチャーへと成長。社会人野球大会では優勝を逃すも、先輩の澤田(関口メンディー)がプロ行きを決めるなど、星河電器は大躍進を遂げた。 ドラマ制作にあたり、社会人野球チームを取材したという制作統括の宇佐川隆史は、「取材をする前は、翔也のように“社会人野球からプロを目指している選手”に対して、他のチームの人たちはいい顔をしないのかな、と思ったりもしたんです。でも実際そんなことはなく、むしろそういった選手に一目置いている。そのためにしっかりとこの社会人野球で結果を残していこうよと、一緒に夢に向かっている姿がすごく気持ちがいいなと思いました」と語る。 「もちろん、社会人野球で働きながらずっと野球をしていきたいという方もいますし、いろいろな方がいらっしゃいますが、それぞれの“夢を追う場所”として、非常にいい環境なんだろうなと感じました。その部分はドラマでしっかりと伝えたいですし、伝わっているのではないかなと思っています」(宇佐川) 第54話では、澤田の巨人入団が決定。その結果、「関西に戻って来ると言われるんだよ、『なんで巨人に行ったんや、この裏切りもん』って」と、澤田が阪神ファンからの野次を嘆く姿が描かれた。 宇佐川は「脚本の根本(ノンジ)さん含めチームの中から出てきたアイデアですが、そこを“巨人”にしたというのは、大阪局(制作のドラマ)ならではといいますか(笑)。彼に期待していた阪神ファンからすると、『裏切りだ』と言ってもおかしくないんじゃないかと」とユーモラスながらも、リアリティのある設定について言及。 第11週の演出を担当した大野陽平も「僕は関東の人間で、大阪で暮らし始めてまだ2年なんですが、大阪局内のスタッフを見ていてもやっぱり阪神ファンの人は多くて。テレビで阪神の試合が流れていれば、仕事しながらもテレビを注視している人が多いですし、相当な愛があるんだなと感じます。そういう人たちにいろいろと話を聞いてみると、“阪神ファンあるある”や“エピソード”をすごく豊富に教えてくれて、なるほどこういう世界なんだなと。まさに、そういった“大阪にいる強い阪神ファン”をイメージして、根本さんも脚本を書かれたのではないかと思います」とした。 「先発ローテ入り確実」とされる澤田を演じる関口メンディーは、6歳から18歳までの12年間、野球を続けてきた実力者。宇佐川は「“本当に巨人軍に行きそうなほどの空気感”がまずいいですよね。そこが眼差しにも出ていて、本人の姿勢がそのまま澤田なんです」と、キャラクターがメンディー自身に重なるという。 「セッティング中に投球練習をされていたので、『ちょっと試しに測ってみませんか』と軽い気持ちでスピードガンを向けたら、122キロ出ていたんですよ。あまりのすごさに驚いていたら、メンディーさんが苦い顔で『130は行きたいですね』とおっしゃっていて、度肝を抜かれました」(宇佐川) 大野も「第11週のウエイトトレーニングをしているシーンでは、実際にとても重たいバーベルを担いでもらっているんです。ドラマの撮影では、色んな方向からお芝居を撮るために同じ演技を何度も繰り返してもらいますが、その回数は本番前のカメラテストなども含めると相当多くなります。でも、身体への負担も考えてこちらから『カメラテストの時は担ぐふりで、抑えてもらって大丈夫ですよ』と相談しても、メンディーさんは『全然大丈夫です』と涼しい顔でおっしゃって、しっかりトレーニングされていました。ダンスをやっていらっしゃるので体の使い方もお上手ですし、練習の時から一切手を抜かない姿勢も含め、本物のアスリートを撮影しているような感覚でした」と、そのストイックさに感嘆した。 また大野は、佐野とメンディーの現場での様子についても回顧。「翔也にとって澤田はチームメイトではあるんですけど、あくまで先輩であり、尚且つ先発の座を争うライバルなんですよね。ですから撮影現場においては、そういった劇中の役割みたいなものを意識して過ごされているように感じました。もちろん仲良く会話をされていらっしゃるんですけど、近くなりすぎないというか。2人でワイワイ楽しく過ごすというよりも、どこかキャラクター同士の人間関係が見えるような関係性だなと思っていました」と、仲間でありライバルでもある、複雑な関係性を演じる2人の空気感を明かした。 勢いに乗る澤田に続き、翔也はプロ入りの夢を掴むことができるのか。もしそうなれば、翔也をどの球団が獲得するのか。その行く末に注目したい。
nakamura omame