自民、規正法「骨抜き」の動き 公・維、ざる批判に警戒感 参院裏金「謎」のまま〔深層探訪〕
自民党の派閥裏金事件を受けた政治資金規正法改正案の実質審議が10日、参院で始まった。今国会の成立に一定のめどが立ったとする自民からは「政治とカネ」の透明化に早くも予防線を張る「骨抜き」の動きが続出。これに対し衆院で自民案に賛成した公明党と日本維新の会は「ざる」批判に神経をとがらせる。参院選の年に安倍派で慣習となっていた「裏金づくり」の謎も残され、論点はなお山積している。 【図解】政治資金規正法改正・自民案の主な検討課題 ◇「検討」多く 「何の目的で、いつ、いくら使われたかを毎年明らかにし、第三者機関で監視する。十年後に(領収書を)公開する」。10日の参院決算委員会で岸田文雄首相(自民総裁)は、政党から議員に渡される政策活動費について、自民案に盛り込んだ見直し内容を説明し、「使途公開」は担保されると主張した。 ただ自民案では多くが今後の検討項目と位置付けられ、実効性に疑いの目が向けられている。この日の参院政治改革特別委員会で、政策活動費の領収書公開や第三者機関設置について、自民案提出者の鈴木馨祐衆院議員は「なるべく早く検討を進めなければならない」と曖昧な答弁に終始。検討の開始時期さえ明確にしなかった。 ◇「入金だけ」パーティー 規正法の「ざる」ぶりを残そうとする動きもある。鈴木氏は領収書の10年後公開について「公開になじまないものも当然考え得る」と答弁し、「黒塗り」などで公開範囲を絞り込む考えをにじませた。 決算委で立憲民主党の村田享子氏は、自民の衆院議員が今月開催予定の政治資金パーティーで「入金のみ」の対応が可能となっていると指摘し、パーティー券購入者の公開基準額を引き下げても「入金のみで経費をかけず年に何回も開ける。脱法、違法パーティーだ」と追及。首相は「議員本人が説明すべきだ」と歯切れが悪かった。 「抜け穴」が存在するとの指摘が相次ぐ中、衆院通過に協力した公明、維新両党からは焦りもうかがえる。公明の山口那津男代表は9日、法改正に絡み「自民が具体案を出さずぐずぐずして(衆院)補欠選挙、(静岡県)知事選に負け続けた」と不満をぶちまけた。 10日の特別委では公明の里見隆治氏が「検討条項が増えた。明確にすることが大変重要だ」と自民に要望。維新の音喜多駿政調会長も「(自民から)残念な答弁が続いている。衆院と同じ対応が難しくなる場合もある」とけん制した。 ◇「中抜き」大規模か 衆院審議では裏金事件の解明がほぼ手付かずだった。「キーパーソン」とされる森喜朗元首相は月刊誌「文芸春秋」に、岸田首相からの聞き取りは体調などを尋ねただけだったと暴露していたが、参院特別委で自民側は「一定の解明はされた」(鈴木氏)と強弁した。 参院安倍派では、改選期を迎える議員が集めたパーティー券収入を全額還流する慣習が続いていた疑惑が浮上している。これに関し複数の政府・自民関係者は、議員側が手元に残す「中抜き」も含まれていた可能性を指摘。判明していない中抜き分を含めれば「安倍派全体の立件対象者は広がる」(関係者)との声も出る。 特別委で共産党の山下芳生氏は参院安倍派の全額還流について「選挙資金として使われたのではないか」と問題視。「自民案は裏金事件から逃げ切り、幕引きを図るものだ」と述べ、真相解明の必要性を改めて訴えた。