【バレー】花村知哉(東山高)春高を逃しても胸を張れる3年間 「地元の高校に進学しよう」から兄、そして“師匠”を追って成長
兄や先輩を追って自らのスタイルを確立
自分の武器は何か。これまで自問自答を繰り返してきたのは、常に前を行く兄の影響が大きかった。バレーボールを始めるきっかけとなったのが3歳上の和哉(東山高→順天堂大3年)。東山高では、3年生時に身長186㎝で最高到達点345㎝をマークしていた。一方で、知哉は中学生時に身長170㎝台。兄のようなスケールはなかった。「超えたい」という思いを抱きながら、その難しさも悟っていた。 「自分は無理だ。地元の高校に進学しよう」 そう考えることもあったが、和哉の縁もあって東山高の練習に参加。豊田充浩監督(現・総監督)からの言葉が道しるべになった。 「お兄ちゃんみたいに身長があるわけではないし、君はお兄ちゃんみたいにならなくていい。これから伸びる保証もないから、今、その身長でできることを考えなさい」 お手本にしたのが東山高で和哉とともにプレーした吉村颯太(日本体大3年)と楠本岳(天理大3年)。ともに身長170㎝台とスパイカーとしては小柄だが、攻守で抜群の安定感を放つ選手だった。 動画を研究した成果も実り、東山高では1年生時からレギュラー入り。2年生時にはインターハイで初の日本一に輝いた。「人にちょっかいをかけたり、笑わせたいタイプ」と自己分析するが、今季はキャプテンとして40人を超える大所帯を束ねた。 「リオさん(松永理生監督)と豊田先生に言われ続けてきたことですが、いくら言葉で伝えても、自分が姿勢で見せないと人はついてこない。キャプテンになった当初は人に頼ってばかりでしたが、そのままではダメだと気づいて。人を動かしたいのであれば、言葉ではなくて、姿勢で見せること。それはこの1年間でいちばん痛感しました」
憧れの「師匠」もそうだった。昨年度は副キャプテンとして、池田幸紀(関西大1年)キャプテンの背中を見てきた。レギュラーとしてプレーした2年生時のインターハイ府予選決勝で敗れ、Bチーム落ちも経験した池田は、苦手だったサーブレシーブを徹底的に練習。3年生時にはディフェンスの要として活躍した。花村の脳裏には、妥協なく取り組む池田の姿が焼きついている。 「幸紀さんみたいになりたいと思いながら、ずっとやっていました」 兄、そして先輩の背中を追い、3年間で自分なりの選手像を確立してきた。 将来のVリーグ入りを目標に、卒業後は天理大へ。「憧れの先輩、(楠本)岳さんと1年間一緒にできるので。スタメンを勝ち取って、関西1位を目指して頑張りたいです」と胸を踊らせる。そして、「いちばんの目標」に挙げるのが、全日本インカレで和哉がいる順天堂大に勝利することだ。 「タイプは違えど、ずっと憧れで、追い越そうと思って頑張ってきました。その影響もあって東山に入って。しんどいこともあったけど、ときどきアドバイスをもらったり、すごく気にしてくれて。兄がいなかったらバレーボールをしていなかったと思うので、めちゃくちゃ感謝している存在です。人生初の兄弟対決を目指して頑張りたいですね」 自分しだいで未来は変えられる。高校での大きな学びを胸に、目標を実現していく。 花村知哉 はなむら・ともや/身長181㎝/最高到達点335㎝/雄新中(愛媛)/アウトサイドヒッター 文/田中風太(編集部) 写真/山岡邦彦(NBP)、田中風太
月刊バレーボール