独VDMメタルズがガスアトマイズ設備増強。金属粉末生産能力3倍に、年産200トン・3Dプリンタ向けなど
独VDMメタルズは、ウンナ工場(ドイツ)内で金属粉末の生産能力を現行比3倍の年間約200トンに増強する。金属粉末専用の建屋を建設し、新鋭のVIGA(真空誘導溶解不活性ガスアトマイズ)設備を導入し、既存設備も新建屋に移設する。VDMメタルズは2024年以降の中期計画で6700万ユーロ(約110億円)を投じ再溶解・板・棒線・粉末など製造プロセス全般で戦略投資を進めている。設備投資計画全体について「27年には追加能力が利用可能になる」とする。 VDMメタルズはニッケル合金の世界最大手で日本法人もある。板・帯・棒線・溶材・鍛造品などを生産し、近年は3D積層造形向けを中心に粉末製品の開発や設備増強にも力を入れる。新VIGA工場は約1千平方メートル。既存設備とその2倍の規模の新設備を設置し、急速な需要拡大に対応する。将来的にはVIGA設備を2基追加する計画もある。 粉末製品のラインアップはコバルト合金、耐食ニッケル合金、超合金、特殊ステンレス鋼など。基本的に自社の生産鋼種は粉末製品として供給可能で、3Dプリンタ向けの成分設計最適化や新合金開発も進めている。 一例が耐メタルダスティング材料として開発し、板・管をメインに実績を挙げている「VDM699XA」だ。耐メタルダスティング性や耐クリープ性に優れるとともに加工性や溶接性を向上した開発鋼種で、最近は水素関連分野での提案も進めている。板は自社生産で、シームレス管はチューバセックス(スペイン)にビレットを供給して製品化している。この鋼種の粉末製品である「VDMパウダー699XA」も3Dプリンタ向けに開発し、24年に欧州圧力機器指令に基づく正式認可を取得する見込みとなっている。 航空機部材などで実績のある高耐食・耐熱合金「VDM718」や、718並みの加工性を維持しながら耐熱性能を高めた開発鋼種「VDM780」も粉末製品として供給可能で、3Dプリンタ向けで注目されている。