意外にも明るいラスト…“托卵”という拒否感のある題材でも最後まで入り込めた理由とは? 『わたしの宝物』最終話考察レビュー
松本若菜主演のドラマ『わたしの宝物』(フジテレビ系)が完結を迎えた。本作は、「托卵(たくらん)」を題材に、”大切な宝物”を守るために禁断の決断を下した主人公と、その真実に翻弄されていく2人の男性の運命を描く愛憎劇。今回は、最終話のレビューをお届けする。(文・西本沙織)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】松本若菜、田中圭、深澤辰哉の修羅場シーンがヤバい…実力派キャストの貴重な未公開写真はこちら。ドラマ『わたしの宝物』劇中カット一覧
美羽(松本若菜)と(深澤辰哉)の贖罪
“托卵”をテーマに夫婦のタブーに切り込んだ『わたしの宝物』が、ついに最終話を迎えた。 栞と3人で最後の面会をするため、宏樹(田中圭)を待っていた美羽(松本若菜)。しかし、そこに現れたのは冬月(深澤辰哉)だった。宏樹は栞が実の父親と生きていく選択肢もあると考え、3人を引き合わせたのだ。 動物園を巡る3人は、傍からみれば“家族”に見えたのだろうか。実の父親でありながらも、美羽親子とは微妙な距離を保っていた冬月。ぎこちなくて、でも優しい時間が流れていたその場所には、美羽が思い描きすらしなかった“冬月と一緒に栞を育てる未来”が確かにあったように思う。 別れの間際、美羽に頼んで栞を抱っこさせてもらう冬月。切なさと愛おしさを混ぜ合わせたような面持ちをしていたのは、きっと栞が自分の子だと察していたからに他ならない。 「夏野、この子は俺の子?」と聞く冬月に、美羽は「違うよ、栞は私の子」と返事をする。冬月が精一杯絞り出した「そうだよな そんなわけないよな」は、自分自身に言い聞かせているようであまりにも悲しい。 美羽は“托卵”の罪すべてを引き受ける、冬月はすべてを分かった上で知らないフリをする…それが2人の最後の責任であり、贖罪だったのだろう。冬月は、最後まで栞が自分の娘だと知らされることはなかった。
宏樹(田中圭)がさらけ出した本音
宏樹に会うため喫茶店を訪れた冬月は、自分は栞の父親ではないと伝える。大切な人の幸せのためなら、自分は身を引く。マスター・浅岡(北村一輝)が言うように、他人のことばかりで本音を置き去りにしてきた冬月と宏樹は、ある意味似た者同士だったのだろう。 宏樹が栞の父親として過ごしたのは半年間。でも、その時間はきわめて濃く、重い。本当の父親であっても、冬月は生まれたての栞を抱いたときの涙を流してしまうほどの温もりも、彼女がどのように笑い、泣いて育ったのかも知らない。 栞が愛らしく、元気に育っているのは、美羽と宏樹が時間をかけて愛情を注いできたから。血の繋がりだけが“親子”ではないことを、冬月は宏樹に真摯に訴えた。 「あなたはどうですか?」まるで本音を引っ張り出すかのような冬月の言葉が、宏樹を走らせる。離婚届を出しに行く美羽を呼び止め、「美羽と一緒にいたい」と本音を曝け出す。 宏樹が美羽を苦しめた過去や美羽が犯した罪は消えないが、すべての痛みをひとりで背負わなくてもいいし、ときには夫婦で分かつことだってできる。宏樹の言葉に触発されるように、美羽も「一緒に栞を幸せにしたい」と本心を明かし、2人はもう一度“家族”としてやり直すのだった。