意外にも明るいラスト…“托卵”という拒否感のある題材でも最後まで入り込めた理由とは? 『わたしの宝物』最終話考察レビュー
松本若菜、田中圭、深澤辰哉を心ゆくまで堪能した
美羽と宏樹の“家族”の再生が描かれ、冬月は夢だったアフリカでの学校作りに莉紗(さとうほなみ)を誘う…。暖かな光が射すラストで幕を閉じた『わたしの宝物』。 そのスピード感のある展開と刺激的なストーリーに、数十分ほど衝撃の余韻に浸ったままになることもしばしば。けれど、人物描写や心情の変化は丁寧かつ繊細で…。 彼らの一挙手一投足に共鳴したりやきもきしたりしながら見守ってきた視聴者は、想像が難しかった明るさを内包するラストに、ホッと胸を撫で下ろしたことだろう。 “不倫”や“托卵”を描く作品といえばドロドロしがちな印象だったが、ドラマチックでピュアな演出はつかの間の癒しをもたらしてくれた。 さらに、美羽を「せざるを得なかった女性」として描いたことで、説得力と共感力が増し、“托卵”という道徳的に拒否感がある題材でも“一人の女性の物語”としてぐっと作品に入り込めた。 惹き込まれたのは、役者の力も大きい。子どもや大切な人の幸せのために間違った選択を重ねる女性の、複雑な感情を巧みに体現した松本若菜。微調整を繰り返しながら、“含み”を持たせた演技で人間の振れ幅を見事に表現した田中圭。 そして、自身が持つ朗らかで優しい雰囲気を存分に活かしながら、表情とまなざしの絶妙な演技で自然と視聴者の目を奪っていった深澤辰哉…。彼女たちの演技力の豊かさを、心ゆくまで堪能できた作品でもあった。 もしも続きが見られるのなら。栞が成長したその先――未来の話もぜひ観てみたい。 【著者プロフィール:西本沙織】 1992年生まれ、広島在住のライター。会社員として働くかたわら、Web媒体でエンタメに関するコラムやレビュー記事の執筆を行っている。ドラマや映画、マンガなどのエンタメが好き。
西本沙織