人生一度はカーレースをやってみたい……だったらマツダ車しかない! ハードルは低いのに本格的な「マツ耐」に潜入取材した
選ばれた6名の2期生のモータースポーツ活動がいよいよ本格始動
ひと口にモータースポーツといっても、F1のようなプロフェッショナルな世界から、もっと身近なグラスルーツと呼ばれるジャンルまで、その幅は無限大だ。その後者のほうでいま、一番輝きを見せているトップランナーのひとりがマツダだろう。 【写真】機体の新人たちが激走! 写真で見る「マツ耐」の様子(全91枚) 2002年に2世代前のNB型で開始された“ロードスター・パーティレース”は、現行4代目のND型になって人気が再加速。当初は茨城県の筑波サーキットのみでの開催だったが、筑波の東日本だけでなく、宮城スポーツランドSUGOの北日本、岡山国際サーキットの西日本という3つの地区シリーズに発展。さらに2年前からは、北は十勝から、南はオートポリスまで、全国を転戦するジャパンツアーシリーズも開催されるようになった。 また、2003年からは、バトル抜きでタイムアタックのみのMFCT(マツダファン・サーキット・トライアル)も開催。そして2012年には、今回取材したマツ耐(正式にはマツダ・ファン・エンデュランス)も行われるようになり、いわゆるマツダのグラスルーツカテゴリー3部門がコンプリートした。 そして昨年から始まったのが「バーチャルからリアルへの道」。簡単にいうと、これまた最近ブームの“eスポーツ”の世界と、サーキットを実際に走って戦うマツ耐をつなぐ新たな試みのこと。マツダが後援するeスポーツ大会で優秀な成績を収めた候補者から希望を募り、1泊2日の座学やサーキットでのトレーニングを実施。合格者にはレース仕様のロードスターで、マツ耐に出場するチャンスが与えられるのだ。 初年度の昨年は8名が選抜され、やはり6月のもてぎラウンドからデビュー。この選ばれし精鋭たちのパフォーマンスが、じつは衝撃だった。2戦目の筑波ラウンドでは総合2位、さらに最終戦の岡山ラウンドでは総合優勝まで達成。なかにはマツ耐以外のカテゴリーにも参加するようになったメンバーもいるし、パーティレースで優勝する快挙を達成したメンバーもいる。 そんな経緯から、今年の2期生メンバーにも多くの希望者が殺到。3月に美祢試験場と筑波サーキットで開催された合宿の結果、27名の参加者から6名が合格となって、マツ耐への参戦が実現することになった。デビュー戦の舞台は昨年同様に、栃木県のモビリティリゾートもてぎ。今年のマツ耐の第2戦として、6月16日のワンデーで開催された。 今回は5号車「バーチャルtoロードスターR」に鍋谷泰輝/石水優夢/稲葉隼平/三宅陽大、6号車「バーチャルtoロードスターV」に新木悠真/井上幸浩/岩見瞭太朗/加藤達彦がエントリー。じつは合格者のうち川上 奏が諸事情から今回の参戦がかなわず、ここには名前がない。さらに井上幸浩の本職は落語家の“桂 三幸”。2期生の合格者では群を抜く44歳という年長者で注目を集めていたが、練習に参加できなかったため、今回はスタッフの一員としてサポートにまわることになった。 つまり、2期生では5号車の鍋谷と石水、6号車の新木と岩見の各2名ずつが今回ステアリングを握る。5号車の稲葉と三宅、6号車の加藤はいずれも1期生のメンバーで、今回は2期生たちのアシストを兼ねての参加となった次第だ。 さて、ここでマツ耐というレースの概要を説明しておきたい。まずは先ほどのグラスルーツ3部門のうち、ドライバーが4名まで登録できる唯一の団体戦となる。さらに、ナンバー付きのマツダ車であれば参加OKで、いわゆるJAF公認レースではないため、競技ライセンスも不要というハードルの低さも特徴だ。 ただし、安全に関わる面では厳しい。服装こそ難燃性素材の長袖&長ズボンであればOKだが、ヘルメットは製造10年以内のJIS規格品が義務。グローブやシューズもしっかりチェックされる。レース中の給油が禁止されているのも、一番の理由は安全性の確保からなのだ。夏場は熱中症対策でエアコンの作動義務が設けられることすらある。 予選タイム順でグリッドを決めて、ローリングスタートの決勝は150分という長丁場。ドライバーが1~3名でも公平性と安全確保のため、途中3回はピットで1分以上の停車が義務となっている。スタート時の満タンで走り切るというのが主なルールだ。 ちなみにマシンのポテンシャルや改造範囲により、マツ耐では合計20クラスを設定。基本的にはクラス別での順位を争うが、レースごとに総合の上位3位までが表彰の対象になり、ポディウムに立つことが許されるルールも設定されている。