がん疑いの小さな病変も発見…過疎地域で始まった『遠隔医療』技術とアイデアで都市部とのレベル平準化図る
家の前に横付けされた車に、患者が乗り込む。 看護師: 「今日ね、いつものように血圧とか熱とか測らせてもらうわな」 吉川恒也さん: 「こんな日はここまで来てくれてええわね」 看護師: 「なあ、雨やとな」 これは、2023年12月から石鏡町と浦村町で実証実験が始まった「医療MaaS(マース)」という取り組みで、玄関を出て数秒で到着する、まさに“小さな病院”だ。
看護師が体温や血圧などを計測するが、そこに医師の姿はない。医師は診療所から、“リモート”で診察する。 小泉圭吾(こいずみ・けいご)医師: 「こんにちは、お元気そうで。あれから痰の調子どう?」 吉川恒也さん: 「今日からおさまってきた。昨日まではあったんやけどな」 看護師: 「胸の音だけ聞かせてもらってええかな?」
看護師が当てた電子聴診器を通じて、心臓や肺の音を医師がヘッドホンで聞く。 小泉圭吾医師: 「OKですね。胸の音も大丈夫みたい」 吉川恒也さん: 「先生の顔まで映ると思わへんかった。それだけで喋りやすいやんね。腰の軟骨が擦れてもうて。年々この車にお世話にならないかんやろな」
過疎地で暮らす高齢者の診療機会を確保することは、医師にとっても急務だったという。 小泉圭吾医師: 「地域の中で今まで互助の主役になっていた30代から50代の壮年層がすごく減っているので、(高齢者を)移送するのが難しくなってきている。そういう担い手が少なくなっていることを考えると、診療所まで来られない患者さんもたくさんいる。お医者さんにいつでもアクセスできるような場所としてMaaSが成り立っていけば、自分の住み慣れたところで、ずっと住み続けられたりとかが可能になると思う」
■「教科書で眺めるよりも、ずっと価値がある」遠隔サポートで医師が育ち医療を救う
「過疎地域」では、他にも新たな対策が始まっている。 御浜町にある「紀南(きなん)病院」で消化器内科を専門とする阪口亮平(さかぐち・りょうへい)医師(33)。この日は、内視鏡の検査にあたっていた。 紀南病院の阪口亮平医師: 「じゃあ検査はじめていきますね。ごくっと飲み込めますかね、ごくっと飲み込んでみて…血止めの処置ね、今から急ですけどさせてもらいますわ。ここからね、さっき血吹いていて、また出始めたかな」