「月収8万円」のパート勤務。今月は残業が多く「9万円」になってしまいました。8万8000円以上で「社会保険」に加入すると聞いたのですが、一度でも超えるとダメなのでしょうか…?
扶養内で働く場合、「年収の壁」とよばれる収入額がいくつかあります。例えば、社会保険料を自分で支払うかどうかの基準となる「106万円の壁」や「130万円の壁」です。 ▼扶養内で働いてるけど、労働時間が「週20時間」を越えてしまった!「社会保険」に加入する必要はある? このように、収入額は社会保険料の支払いを決める要件の1つとなりますが、残業が多かった月などは収入が一時的に増えることもあります。収入額は何を基準に判断されるのか、よく分からないという人もいるかもしれません。 本記事では、残業代が多くなり収入が一時的に増えた場合に、社会保険料を自分で支払うかどうかの基準となる収入額にどう影響するのかを解説します。
2024年10月から社会保険適用の要件が改正された
社会保険には健康保険、厚生年金保険、介護保険、雇用保険、労災保険の5つがあります。このうち、2024年10月より、健康保険と厚生年金保険は、次の要件に当てはまると自分で社会保険料を支払う必要があります。 ●所定内賃金が月額8万8000円(年収106万円の壁)以上 ●従業員数が51人以上の企業に雇用されている ●週の所定労働時間が20時間以上 ●2ヶ月を超える雇用の見込みがある ●学生ではない
残業代は所定内賃金に含まれない
社会保険料(健康保険・厚生年金保険)を自分で支払う要件の1つである「所定内賃金」は、給料の支給額とは異なります。所定内賃金とは、毎月決まって支払われる賃金のうち、次に挙げる「所定外賃金」を除いたものです。 ●超過勤務手当 ●休日出勤手当 ●深夜労働の割増賃金 いわゆる残業代は超過勤務手当に該当し、所定外賃金となるため、社会保険料を自分で支払う要件の収入額には含まれません。収入以外の要件を満たしている人が、残業代により一時的に収入が増えて月額8万8000円を超えたとしても、社会保険料を自分で支払う必要はありません。
社会保険料を自分で支払う要件に影響する賃金アップに注意
月の収入が増えた場合に、社会保険料を自分で支払う要件である所定内賃金に影響するケースがあります。代表的な事例を3つ紹介します。 ■時給単価が上がった 勤め先の昇給制度による定期昇給や、毎年10月の最低賃金の改定などによって、時給単価が上がったことで収入が増えた場合は、所定内賃金に影響します。 ■契約上の労働時間が長くなった 残業ではなく、契約上の労働時間が長くなった場合は、所定内賃金に影響します。例えば、6時間勤務だった人が8時間勤務に契約更新した場合、増えた2時間分の賃金は所定内賃金となります。 ■新しく手当が支給されることになった 勤め先によってはさまざまな手当がありますが、中には所定内賃金にカウントされるものもあります。例えば、交替勤務手当は所定内賃金に含まれます。新しく手当が支給されることになったら所定内賃金に含まれるか、勤め先に問い合わせましょう。