将来の北海道?「ニュージーランド」鉄道の実態 人口少ない国で鉄道はどんな役割をはたすか
首都ウエリントンには韓国製電車による4系統の近郊路線があるほか、距離が長めのマスタートンへはディーゼル電気機関車牽引の「ワイララパ・コネクション」も運行している。ウエリントン―パーマストンノース間140kmには、ディーゼル電気機関車牽引の「キャピタル・コネクション」もあり、朝の上りと夕方の下りのみ運行、遠距離通勤に特化した列車である。 2都市ともおもな需要は通勤と生活の路線であるが、オークランドでは鉄道+路線バスで空港アクセスの機能も果たしているので、外国人利用者も多い。起点となるのはオークランド中心街にあるブリマートという地下の終点駅であるが、現在はオークランド中心街の地下を通ってループ状にする延伸工事中で、完成するとブリマート駅は中間駅になる。
両都市とも近郊鉄道とはいえクロスシート中心の車両で、通勤といってもゆったりした座席、日本のような混雑は皆無であった。 ウエリントンの近郊路線は山間部や太平洋沿いの区間も多く、ニュージーランドらしい車窓を気軽に楽しめる。起点になるウエリントン駅は立派な構えの終点駅で、長距離列車、バス路線などが集まる、いわゆるターミナル駅である。 ウエリントンでは近郊路線乗り放題の1日券(27ニュージーランドドル)を利用、電車路線だけでなく、前述のマスタートンへの客車列車にも乗れるので、都市内だけでなく汽車旅も楽しめる。
では、オークランドはというと1日券がない。1日券がないだけではなく、観光客が使えそうな割引運賃が何もない。 しかし、それには納得の理由がある。オークランドの都市内交通は「ホップカード」というIC交通カードで利用、距離に応じて運賃が引き落とされるのだが、1日に引き落とされる上限が20ニュージーランドドル(約1818円)なので、1日券が20ニュージーランドドルだと思えばいいのである。 つまり「1日券で元が取れるかな?」、「こんなに乗るなら1日券を買っておけばよかった」などということがない。きわめて安心で親切なシステムである。しかも、近郊鉄道、路線バス、そして定期船すべてが同じ組織の運営なので、観光バスや空港バスにでも乗らない限り、1日の交通費は約1800円を超えることがないという優れたシステムである。これなら1日券の必要はない。