「旦那とは合わない」「妻は俺の話をなんでも否定する」 老後に夫婦仲が悪くなるのはなぜなのか。老後の「ギスギス夫婦」と「おだやか夫婦」の決定差
■否定から同意へ 新車の例で言えば、「最新の車は安全装置があって、暴走しないようになっている」と説明することで相手の理解が得られ、否定から同意に変わってくれることもあるでしょう。相手は、ただ感情的に言っているわけではなく、心配や不安から否定しているだけということも多いのです。 なので、否定されたことでカッとなってはいけません。なぜ相手が否定するのか考えてみましょう。逆に、否定に対して怒りで反応すれば、同意を得られることは少ないでしょう。
ただし、こうしたすれ違いから対立状態になってしまうことは、高齢になればなるほど起きやすくなってきます。これは先ほども書きましたが、新しいことに対しての理解力が低下しているためです。また、新しい情報に触れる機会がそもそも少ないことが根底にあると言えます。だれでも知らないことには不安を抱くものです。 では、どうすればいいのでしょうか。 会話をする相手が夫婦だけではなく、たとえばお子さんでもいれば、いろいろな情報を手に入れることができます。触れる情報が多ければ、新しいことに対しても寛容になれるのです。
子供や孫との交流は、老夫婦の孤立を防いでくれるだけではありません。情報に触れさせてもらえるという意味でも、重要な意味を持ってくるわけです。 スマホを買うことはできても、ちょっとした使い方がわからないときはあるでしょう。そんなときでも、子供たちと接点を持っていれば簡単に解決できるはずです。こうしたささいな交流が、老夫婦の対立を防ぎ、脳の衰えを防ぐ可能性があるのです。 夫婦のどちらかの認知機能が低下してくるという状況は、決してめずらしいことではありません。そうなった場合、相手を否定するということが多々起きてきます。こうなってくるとますます夫婦間の会話は難しくなってきます。それは家族にとって大きな問題となります。
認知症の患者を抱えたとき、多くの家族は本人をなんとか説得して、理解させようとします。何度言っても間違えたりできなかったりすると、どうしても大声で怒ってしまうものです。 しかし、認知症の患者さんは、なぜそう言われるのか理解できません。ガスコンロに電動湯沸かし器のポットを直接置いてしまい火事になりかけた、というようなことが起きます。どうしてそんなことをしたのかと、家族は怒ってしまいますが、本人は家族を思って早くお湯を沸かしておこうと思ったかもしれません。電動湯沸かし器とやかんの区別がつかなくなっているので、自分が正しいことをしているのに怒られたと思い、患者さんはかえって混乱してしまうのです。