「自分の手を汚さない」霊能力者かたり父殺害させたか 美人局も主導 48歳女の真実とは【宮城発】
ジュンが芽生えさせた殺意
ジュンとLINEでメッセージを交わすようになった直哉被告。2023年1月、直哉被告と敦子被告が新型コロナウイルスに感染すると、直哉被告は、脳梗塞になったことのある敦子被告を心配し、ジュンに相談した。呪いのせいだと考えたという直哉被告は、ジュンから「村上さんと直哉被告の母がかけた呪い」と聞くと、呪いを解くには父を殺すしかないと考えるようになったという。 LINEで接触してきて、直哉被告に殺意を植え付けたジュンと名乗る人物。一体、何者なのか。検察はスマートフォンからその“足跡”をたどっていた。
敦子被告のiPhoneを使ったジュン
検察が法廷で明らかにしたのは、直哉被告のLINEの解析結果だ。解析によると、ジュンのメッセージは敦子被告が持つiPhoneから送信されていた。敦子被告はインターネットを利用できるスマートフォンの他に、Wi-FiしかつながらないiPhoneを持っている。メッセージはこのiPhoneから送られ、敦子被告の車にあるWi-Fiルーターを経由して送信されていたという。さらに、コンビニの防犯カメラには、ジュンが直哉被告にメッセージを送信した同時刻に、敦子被告が周囲を気にしながらiPhoneのようなものを操作している様子が映っていた。
最後まで殺人の関与を認めず
検察が明らかにしたジュンと敦子被告とのつながり。敦子被告は法廷で「JUN」というアカウントを登録したことも使ったことも「ない」と答え、最後まで殺人への関与を認めることはなかった。 2024年11月19日、仙台地裁で開かれた論告求刑公判。 検察は、敦子被告を事件の首謀者とし、美人局などの犯行が発覚することを恐れ、村上さんの遺産や退職金を奪うために殺害したと指摘。「自分に心酔している直哉被告を手駒として、自分の手を汚さないようにした卑劣極まりない行動には、極めて強い非難が値する」として懲役30年を求刑。直哉被告には「愛する敦子被告との生活を維持したいという利己的な思いに基づくもので、父親を殺す重大な結果を生じさせた」として懲役23年を求刑した。 一方、弁護側は、敦子被告がジュンである決定的な証拠はないと主張。敦子被告には執行猶予付きの判決を求め、直哉被告は呪いを信じるなど主観のゆがみがあったとして、懲役9年以下の判決を求めた。
「申し訳ない」次男の言葉
直哉被告は最後に「父に申し訳ない気持ちでいっぱいです」と話した。この言葉はそのまま受け止めるべきなのか。そう迷いを感じさせるほど、直哉被告の敦子被告とジュンへの心酔ぶりは強く、ゆがんだものだった。実の息子に刺されて亡くなった村上さんは直哉被告を最後に見て何を思ったのだろうか。判決はまもなく言い渡される。
仙台放送