[大童澄瞳さん]「映像研には手を出すな!」の漫画家は発達障害…小中学校は不登校気味、通信制高校で映画作りに熱中
ウェルネスとーく
アニメ化、実写映画化された人気漫画「映像研には手を出すな!」の作者である漫画家、大童澄瞳(おおわらすみと)さんには発達障害があります。計算や漢字を書くことが苦手で、小中学校は不登校気味だったとか。障害とどうつきあってきたのか、どうして漫画家になったのかをうかがいました。(聞き手・斎藤雄介) 【漫画2ページ】「映像研には手を出すな!」の印象的なシーン
計算ができない、漢字が書けない
――学習障害がおありだということですが、具体的にはどういう感じなのでしょうか。 顕著なのは、計算がかなり不得意であることですね。ひと桁の足し算引き算でたまにつまずくことがあります。発達の遅れがあるだけなので、今31歳になりましたけど、ようやく、ひと桁の足し算引き算が人並みにはできるようになりました。何とか対処できるようになってきたかなという。 ただ、私生活では、時間の逆算ができないので困ります。今日、ここに来るときも、何時に起きたらいいのか、何時に身支度を終えていればいいのか、何時に電車に乗ればいいのか、そういう計算ができないので、かなり大ざっぱに4時間あれば間に合うだろう、と考えました。そういう対処法になる。 あとは漢字が書けません。小学校で漢字の練習をするわけですけれども、当然のようにテストで0点をとったり。普通の生活をしていれば、覚えるであろう漢字も書けなかったり。それがもう今に至るまで続いています。 あとちょっと文章を読むのも苦手です。
――「映像研には手を出すな!」で、吹き出しの中のセリフを読むと、文章表現が豊かで巧みだと思うんですけど。 言語能力と、読み書きができる能力っていうのは、実は別なんですね。 私は漢字は書けないけれども、読めるんです。 「髑髏(どくろ)」とか「薔薇(ばら)」とか「葡萄(ぶどう)」とか、そういう漢字は、皆さん、読めても書くのは難しいでしょう。 私の場合、もっと日常的な簡単な漢字でもそういう感覚です。例えば「新聞」と言われると、どう書けばいいのかわからない。でも、もちろん読めます。 文章についていうと、文字列を目で追っていくことにつまずきがあるけれども、読解する力は平均より少し高いという診断を受けています。ギャップがあるんですね。 漫画の吹き出しのセリフは、パソコンのキーボードで打ち込んでいるので、漢字が書けなくても大丈夫です。 ――聞いたり、話したりは普通にできるんですね。 そうですね。ちょっと達者なほうではありますね。だけど読み書きとなると、ちょっと難しい。 ――そのギャップはなぜなのでしょうか。 一文字ずつ追っていってしまって、なかなか文章としてまとまって頭に入ってこないというのがあります。ただ面白いことに、小学校の国語の授業で、みんなと同じペースで音読していると、内容が頭の中に入ってくる。 頑張って読みさえすれば、一度読んだ内容はあらかた覚えているので、「この文章で作者は何を言いたかったのか」みたいな問題はできました。漢字はずっと書けないままなんですけど。 こだわりが強いという面もあります。私の場合、言語能力は高いと診断されているんですけど、その反面、言葉の本来の意味にかなり執着があって、外れた使い方をされると、とたんに意味がわからなくなるということがあります。 たとえば、自動車学校のテストで、「右折するときは、交差点の中心の内側を曲がる」とか書いてあるんですね。交差点の中心の内側ってどこなのかわからない。 他にも、たとえば、駅のアナウンスで、「黄色い線の内側へお下がりください」と言われたときに、黄色い線の上に立てということか、黄色い線のホーム側に立てということか、黄色い線の線路側に立てということか、わからない。 今は、「黄色い線の内側」とは「黄色い線のホーム側」を指していることを知識として知っているので、そこでつまずくことはないです。 このように、その言葉のもとの意味にとらわれて、常識的なとらえ方みたいなものがままならない瞬間もある。そういう特性なのかなと思う。 こういうふうに対面で会話しているときは、やっぱりかなり負荷がかかります。会話をすごく楽しんではいるんです。自分のことを質問されて答えるのは、すごく楽しいけれども、家に帰るとどっと疲れる。