【江口のりこ】44歳、私が選んだ今とこれから。「テレビドラマも悪くないな。と思えるようになった気がする」なけなしの2万円から主演女優への道のり
40代、「どんな人と出会えるか」が仕事の楽しみになっている
40代の今、私が仕事をするうえで大切にしているのは“人”です。当たり前ですが、映画もドラマも舞台も自分一人では作れないですし、人との出会いは自分に新しい視点や発見を届けてくれることも。だからこそ、今の自分の中には「こういう役がしたい」とか「あんな役をしたい」とかいう思いはあまりなくて、「どんな人や作品と出会うのか」が一番大事な気がしています。 今回主演を務める映画『愛と乱暴』で私が演じるのは専業主婦の桃子です。彼女は夫の心が離れていることに気づいているのに、夫を手放すことができずに気づかないふりを続けてしまうんですけど。その夫を演じているのが小泉孝太郎さんで。実は私、10年前も孝太郎さんを追いかける役を演じているんですよ。で、めぐりめぐって今作品でも彼を追い続けているっていう(笑)。また10年後にも追いかける役がくるんじゃないかと思うような、そういう、共演者とのめぐりあわせも面白いですし。作品を重ね、いろんな方々と出会うたびに「この人がいるならきっと面白い」、「この人がいるなら参加したい」そう思える人も増えていく。スタッフさんの中に知っている名前を見つけると嬉しくなりますし、心強い気持ちにもなれる。そういう人が増えていくっていうのは、この仕事を続ける喜びのひとつでもありますよね。
あの頃の自分に伝えたいのは 「これでいいのか分からない、でも、それでいい」
若い頃って、まだまだ経験値が少ないからこそ「これでいいのかな」って考えてしまうことが多いと思うんです。でも、それって考えても仕方ないんですよね。立ち止まって「本当はどうしたいの?」って自分に問いかけたところで明確な答えなんて簡単には出てこないし。どの決断や選択が正解なのかなんてやってみないと分からないですしね。 私自身、自分で考えて決めたことは「劇団に入る」、「上京する」くらい。そもそも、役者の仕事はオファーをいただいてこそ成立するもの。どんな役を演じるかは周りが決めることですから。舞い込んできた役に対して「今はこれをやるときなんだな」という気持ちで向き合うだけ。流されるまま、ここまできたような気がします。 「趣味が欲しい」と言いながら、今も趣味が見つからない私は、本当は趣味が欲しくないのかもしれないし。「引っ越したい」と思いながら、もう5年も今の家に住んでいる私は、本当は引っ越したくなくないのかもしれない……。いくつになっても自分のことなんて、分からないことだらけです。だからこそ、20代だった頃の自分に言葉を届けることができるなら「これでいいのか分からない、でも、それでいい」と伝えたい。あともうひとつ、「しっかり寝ろ」も伝えたいですね。睡眠はシンプルに疲弊した体や心を休めてくれる。それは「昨日これだけ寝たから大丈夫」、「じゅうぶんに寝たからやれるはずだ」と自分に自信も届けてくれる。だからこそ、考えても仕方のないことを夜な夜な考えたりしない。そんな時間があるなら「しっかり寝ろ」なんですよ。
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