【江口のりこ】44歳、私が選んだ今とこれから。「テレビドラマも悪くないな。と思えるようになった気がする」なけなしの2万円から主演女優への道のり
20代、現場では“得体の知れないヤツ”だった
20代に突入したとき、私は何かのインタビューで「自分を大事にすること。やりたいことをやる、それだけです」と語っていたそう。だがしかし、実際はほぼ真逆。当時の自分に言葉を届けることができるなら「嘘をつけ!」と言ってやりたいですね。やりたいことができている毎日は新鮮で楽しかったけど、同時に、大変なことも多々ありました。お芝居の世界に飛び込んだばかりの私は誰にとっても“得体の知れないヤツ”で。芝居に関して未熟なのはもちろん、何をするにもやり方がよくわからない、現場ではスタッフさんからよく怒られていましたしね。 なかでも、一番大変だったのがテレビドラマです。劇団の舞台は楽しいけれど、テレビドラマだけはどうしても好きになれなくて……。今でもよく覚えているのが初めて出演した2時間ドラマです。私の役はそうめんを作りながら警察の聞き込みを受ける、そうめん工場で働く女性だったんですけど。何も知らない私は、そうめん作りをいつ辞めたらいいのかがわからない。でも、現場は忙しく、私のことなんて気に留める人もいないわけで。結果、やめどきがわからず、みんなが昼休憩に行っている間も延々と一人でそうめんを作り続けていたっていうね(笑)。
↑24歳の時に主演を務めた映画『月とチェリー』
30代、テレビドラマの現場を好きになれた
テレビドラマの現場は、いつまでたっても居心地が悪く、自分の居場所とは思えなかった。 30代、自分にとっての大きな出来事といえば、そんなテレビドラマを好きになれたことなのかな。そのきっかけになったのがドラマ『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』とプロデューサー小田玲奈さんとの出会いでした。小田さんは作品への愛はもちろん、良い意味で周りを巻き込む力を持っている方で。それまで、現場では下ばかり向いていた私にいろんな景色を見せてくれたんですよ。ドラマは時間がタイトだからこそ、芝居を詰める時間を持つのが難しく、私はそれも好きじゃなかったんですけど。パッと顔を上げたら、自分だけじゃなく、全員がタイトな時間の中で一生懸命に仕事と向き合っている姿が見えた。現場にいる一人一人の顔をちゃんと見れるようになったときに「テレビドラマも悪くないな」と思えるようになった気がします。
【関連記事】
- 【黒谷友香】48歳、私が選んだ今とこれから。「意見が違っても“そういう考えもあるんだね”と受け入れます。いろんな人と共存しながら、めぐりのいい人でいたい。」
- 【雛形あきこ】46歳、私が選んだ今とこれから。「産休中の私が感じたような“まわりから遅れをとってしまいそう”という気持ちは、あとからでも十分取り返せる」
- 【奥菜恵】44歳、私が選んだ今とこれから。「あの頃の自分に“そんなに心配しなくて大丈夫"と伝えたい」
- 【鈴木亜美】42歳、私が選んだ今とこれから。「それでいいんだよ、間違ってなかったよ」と、あの頃の私へ言ってあげたい。
- 【hitomi】48歳、私が選んだ今とこれから。「突っ走って失敗した20代が私には必要だった」