ポイント差はわずか。熾烈を極めるJ1残留争いに福西崇史「下位チームにも勝てる力があり、行方をわからなくしている」
不動のボランチとしてジュビロ磐田の黄金期を支え、2006年開催のドイツワールドカップには、日本代表の中心メンバーとして出場。日本サッカーが世界水準へと飛躍していく瞬間をピッチの中央から見つめていた福西崇史。 そんな福西崇史が、サッカーを徹底的に深掘りする連載『フカボリ・シンドローム』。サッカーはプレーを深掘りすればするほど観戦が楽しくなる! 第111回のテーマは、J1残留争いについて。残り3節となり、やや抜け出してきたクラブ、低迷するクラブなど、熾烈を極めるJ1残留争いの行方を福西崇史が解説する。 * * * ■残留争いを抜け出した湘南と京都の攻撃力 ――今季の残留争いはかなりポイント差が詰まる展開になっていますが、ここまでどのように見ていますか? 福西 サガン鳥栖の降格が決定しましたが、それ以外は残り試合数のバラつきもあって、まだまだ残り2枠の行方はわからない状況ではあると思います。ただ、前節のセレッソ大阪戦に引き分けた19位の北海道コンサドーレ札幌は残り3試合で勝ち点33。残留圏の柏レイソルと6ポイント差はかなり厳しいと言わざるを得ないと思います。 ――ここにきて前節で勝利した湘南ベルマーレ、京都サンガF.C.がともに勝ち点44で、順位をそれぞれ12位、13位に上げてやや抜け出してきたように思います。 福西 残留争いの行方がわからない理由の一つに、下のチームでも勝てる力があるということです。湘南は直近4連勝、京都も直近で鳥栖やサンフレッチェ広島に勝ったことで残留争いからやや抜け出した状況となりました。厳しいと言った札幌にしても前半戦の状況からよくここまで盛り返したと思います。 それにしても改めて湘南の終盤戦での強さは目を見張るものがありますね。例年は得点力不足に苦しんでいましたが、今季は失点数が増えたものの、そのぶん得点数も増えていることはここ最近の調子の良さに現れていると思います。 その点でいえば、京都も点を取れずに苦しんでいましたが、12試合で10得点と驚異的な得点ペースのラファエル・エリアスを中心に、マルコ・トゥーリオや原大智ら強力な前線で後半戦はほとんどの試合で複数得点を奪えていることが、終盤戦の強さにつながっていますよね。 ■降格圏間近の新潟・柏が抱える課題 ――一方で、ルヴァンカップで準優勝となったアルビレックス新潟ですが、リーグ戦では直近6試合で1分5敗と勝ちなしで苦戦を強いられています。 福西 18位のジュビロ磐田より1つ少ない残り3試合で勝ち点が5ポイント差。もうわからなくなりましたよね。個人的に魅力的なサッカーをしているチームだと思っているし、ボールを繋ぐ攻撃的なスタイルを貫けているチームは新潟くらいになってしまったので、踏ん張ってほしいです。 ――苦戦の一番の理由は? 福西 やはり攻撃的なサッカーを貫く一方で、得点の部分で苦しんでいますよね。得点を計算できるのは10得点の谷口海斗くらい。京都のように強力な外国人ストライカーがいれば......と思ってしまいますが、良い選手はすぐ取られてしまうのが新潟の難しいところです。 ルヴァン決勝の結果によって最終盤で勢いに乗れるかが鍵になると思っていましたが、激闘の末にPK戦で準優勝。タイトルに手が届かなかった落胆は、リーグ戦へのメンタルに大きく影響するとは思います。 次節は残留を争う柏との直接対決。この試合の結果はあまりにも重要なのは言うまでもなく、その後の2試合への影響も非常に大きくなるので、ルヴァン決勝からどのように立て直すのか注目ですね。