DeNAドラ1遊撃手が“ショート一筋”をあきらめた日「正直ちょっと悔しい気持ちはありました」…森敬斗22歳が語る、5年目の変化
ただがむしゃらにやるだけじゃダメ
「もちろん入団からずっと急いでいるし、戦力になりたいと思って日々過ごしてきました。ただ怪我もありましたし、大事なのは自分のやるべきことを、自分のペースでやることだと思うんです。この数年で気づくことも多かったですし、ただがむしゃらにやるだけじゃダメなんだなって」 多少のジレンマは漂うが、確たる割り切りに加え、どこか森は楽しそうに話すのだ。ふと思い出したのが、森が以前「野球はあまり好きじゃない」と公言していたことだ。確かに野球は失敗も多いスポーツだ。いくら優秀な打者でも3打席に1本しか安打が出ず、優勝をするチームも約6割しか勝てない。喜びよりも悔しさ。すべてが万事上手く行くスポーツではない上に、練習もきつければ、年間の試合数を考えてもハードワークが必要となる。素直な性格の森がそう言う気持ちもわからなくもない。
一番バットを振ってきた自信もある
だが、何か変化が起こっている。 森は顔をちょっとだけほころばせ言うのだ。 「じつは以前よりも野球が好きになっているんですよ。特に今年は、キャンプインから以前よりも自分で考えて練習をやるようになったし、とにかく納得するまで量をこなそうって。だからキャンプでは最後まで練習をしたし、一番バットを振ってきた自信もあるんです。なんか野球へ対する気持ちが大きくなったような気がするんですよね」 ともすれば、森はこれまでは類まれな身体能力とセンスのみで野球をやってきた。そこに根源的な“野球が好きだ”という情が深まり、今の森の原動力になりつつある。 「もったいない時間を過ごしたくないし、すぐに結果に繋がるとかじゃなくて、練習をたくさんすること、この1球、1球を積み重ねることで何かを得られるかもしれないって思えるようになったんです。だから今は、楽しい気持ちで練習や試合に挑めている感じなんです」
試合中でも成長していく姿を見せて行けたら
待ち望まれる覚醒の日は、近づいているのかもしれない。 「レギュラーとして試合に出たい気持ちは一杯なので、そのために自分は何をすべきか、しっかりと考えていきたい。僕の場合、打つこと守ること走ること全部やらなきゃいけない。常にレベルアップを目指し、試合中でも成長していく姿を見せて行けたらと思います」 まだ22歳、されどプロ5年目ということを鑑みれば結果が求められるキャリアに差し掛かっている。溢れんばかりの才能があることは疑いようなく、多くのファンがレギュラーとしてグラウンドに立つことを期待しているはずだ。多くの失敗を重ね、自分自身やチームを冷静に俯瞰できるようになった今こそ、森敬斗よ、悠々として急げ――。
(「ハマ街ダイアリー」石塚隆 = 文)