DeNAドラ1遊撃手が“ショート一筋”をあきらめた日「正直ちょっと悔しい気持ちはありました」…森敬斗22歳が語る、5年目の変化
本職以外のポジションにも挑戦
そして森にとって大きな出来事といえば、入団以来ショートしか守ってこなかったが、新たにセカンドやサードの守備にも入るようになったことだろう。誤解を恐れずに言えば、森は“聖域”をはく奪された。 チームからその旨を伝えられたのは昨年末のことだったというが、果たして森はその時に何を思ったのか。そう尋ねると、森は宙を睨みゆっくりと語りだした。 「ずっとこだわってショートをやってきたし、守らせてもらっていたので、最初にチームの方針を聞いたときは、正直ちょっと悔しい気持ちはありました」 少しだけ重い口調。だが森は目に力を入れて続けた。
ショート以外を守って見つけた「副産物」
「ただ、違うことをやることでいいことも一杯あるんじゃないかなって思ったんですよ。だからオフからショート以外の練習を始めましたし、実際にセカンドやサードの守備に入ると新しい感覚がたくさんあったんです。動作ばかりではなく、守備で見える視野というか、バッターの見え方が違って、例えばセカンドから自分と同じ左バッターを見ると肩が閉じていればやっぱりいい打球が行くし、開いてしまって体がこちらに向けばセカンドにゴロが来る。これは自分の学びにもなるし、またセカンドでゲッツーを取ろうとする時に体が流れると投げられないので、ショートでも流れない入り方ができればより確実性が増すなとか、新しいインプットや刺激が結構あるんです」 どこか明るい表情で森は話した。そこには好奇心と、なにがあってもへこたれないといった芯の強さが感じられた。
京田、林、石上…内野手が新加入
振り返れば、森は2019年のドラフト会議で球団にとって筒香嘉智以来となる、10年ぶりの高卒1位指名の野手である。当然、多大の期待を背負ってきたが、非力さに加え怪我も重なりなかなか戦力になることができず、球団は森とポジションがかぶる京田陽太や林琢真、石上泰輝らを獲得してきている。 「正直、誰が来ようが関係ないって気持ちなんです。なによりも自分が結果を残せていないのが悔しい。自分がやることをやっていればおのずとレギュラーは獲れるはずだと思ってやってきたし、だから他人は気にせず、惑わされることなく、自分自身に目を向けることだけを意識してきました」 だから春季キャンプが若手ながらB班スタートでも焦ることはなかった。 「怪我もあったので、いきなり上で力んで急いでやるよりは、自分と向き合い時間を作ったほうがいいですし、B班だからこそ、じっくりやり込むことができたと思うんです」 ただ高卒とはいえプロ5年目、悠長にしているわけにはいかない。