世界GP王者・原田哲也のバイクトーク Vol.119「マルケスはファクトリーとサテライトの壁を超えるか」
今年は全日本ロードレース・JSB1000が面白い!
── 一時はトップも走った水野涼。 期待通り、開幕戦からドゥカティが素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたレースと言えば、そう、全日本ロードJSB1000クラス! ドゥカティ・チームカガヤマの水野涼くんが、スーパーバイク世界選手権(SBK)でチャンピオンを獲ったファクトリーマシン・パニガーレV4Rをライディングし、ヤマハファクトリーの中須賀克行くんに次ぐ2位となりました。 パニガーレV4RはSBKのファクトリーマシンですが、チームカガヤマはファクトリーチームではありません。十分な準備期間もなかったはずなので、V4Rのパフォーマンスを引き出すこと自体が大変だったと思います。水野くんのライディングも素晴らしかったし、チームの仕事も見事でした。 レース後の水野くんは「勝ちを狙っていたから2位は悔しい」と語っていましたが、開幕戦であのレースまで持ち込むのは本当に大変だったはず。今シーズン中に中須賀くんに勝つ姿が見られそうですし、もしかすると第2戦モビリティリゾートもてぎや、第3戦スポーツランドSUGOもチャンスかもしれませんね。 しかし開幕戦鈴鹿で優勝した中須賀くんは、本当にすごい! さすが12回もチャンピオンになっているだけあって、レースに勝つために何が必要かを完全に分かっています。ただ、年齢を重ねると恐怖心が増したり体力が落ちたりいったネガティブ要素が増え、分かっていてもできなくなるもの。42歳にもなってまだモチベーションを保ち、ずっとみんなの目標であり続けている中須賀くんには、脱帽です。 ──V12を経てなお貪欲に勝利を求め続ける中須賀克行。
ダンロップタイヤを選んだ長島哲太くんも、想像以上の活躍を見せましたね。路面温度が低く、ダンロップの特性には合っていたコンディションでしたが、彼が走らせているCBR1000RR-Rはキット車ですからね……。ヤマハやドゥカティのファクトリーマシンを相手取っての戦いは、ライダーの頑張りが目に見えて、とても素晴らしかったと思います。 タイヤの開発はかなり難しいチャレンジです。長島くんのチームも「3年計画でチャンピオンを狙う」とのことですが、確かにそれぐらい時間がかかるかもしれません。ブリヂストン一強もすごいことですが、ファンとしてはライバルメーカーとバチバチとぶつかり合うタイヤ戦争も楽しみですよね。将来的には長島くん+ダンロップタイヤで鈴鹿8耐制覇も……なんて、楽しく妄想してしまいます。 ──キット車+ダンロップで速さを見せた長島哲太