詐欺師たちは日々技術水準を上げている…がん罹患公表後、一層増えた〈SNS型投資詐欺〉の被害報告に森永卓郎氏が思うこと
経済アナリストの森永卓郎氏は、膵臓がんへの罹患を公表したことをきっかけに、自身の名前もSNSが舞台となる投資詐欺詐欺の広告に利用されることが急増したと言います。森永氏の著書『がん闘病日記』(三五館シンシャ発行、フォレスト出版発売)より、投資被害が巧妙化している現状について、本記事で詳しくみていきましょう。 都道府県「医療費」ランキング… 2023.02.15
「短期間で数倍、数十倍のリターン」投資詐欺の被害急増
2024年3月7日、警察庁がSNS型投資詐欺の被害状況を初めてまとめた。2023年の認知件数は2,271件、被害総額は277億9,000万円だった。 問題は、被害が急増していることだ。月別の状況をみると、2023年前半は、1カ月あたり100件前後だったのが、7月には204件と倍増し、12月には369件と4倍近くに増えている。 詐欺の典型的な手口は、SNS上に著名人が投資を勧誘する広告を掲載し、それをクリックさせることから始まる。男性の場合フェイスブック、女性の場合はインスタグラムがもっとも利用されている。 クリックすると、LINEのグループチャットに誘導され、そこで著名人自ら、あるいはそのアシスタントを名乗る人物が投資のアドバイスをしてくる。短期間で数倍、数十倍のリターンが得られる投資商品を推奨してくるのだ。 広告に登場する著名人は、堀江貴文、前澤友作、澤上篤人、岸博幸、村上世彰、桐谷広人といった経済の専門家たちなのだが、じつは私も2023年の初めくらいから、盛んに詐欺広告に利用されてきた。 詐欺へ利用され始めたのは「がん罹患」がきっかけ 私のところには、詐欺を疑う人たちから頻繁にメールで連絡が来るのだが、がんへの罹患を発表してから、連絡が激増するようになった。 ITの専門家が調べてくれたところによると、私の名前を騙ったネット上の詐欺広告は400種類以上あるというのだが、がん罹患を公表してからの詐欺広告は、病気を逆手にとったものに変わった。 「私はすい臓がんにかかってしまって、余命が長くありません。そのため、これまでの研究で獲得した投資のノウハウをすべてお伝えしたいと思います」というのが基本的なストーリーだ。 広告をクリックして誘導されたグループチャットには、数十人から数百人が参加していて、それぞれが「大儲けができた」と自慢をするが、そのほぼすべてがサクラだ。もちろん投資を勧誘する著名人も、写真を勝手に使われただけの偽物なのだが、被害が急増しているひとつの要因が手口が巧妙化していることだ。 たとえば、グループチャット上で指導する著名人に対して、「本物の先生ですか?」という質問をすると、運転免許証の画像を送ってきたり、生成AIを用いて作成した本人に似せた音声メッセージを送ってくる。 私のところには、いまでも毎日平均3人ほどの被害者から連絡が来るのだが、詐欺師たちが日々技術水準を上げていることが、その連絡内容からもよくわかる。