「中年男性は怖い…」正当化される差別、支援対象から除外されてしまいがちな弱者男性の苦悩とは?
弱者男性1500万人時代#4
コミュニケーション下手、性被害経験、中年。同様の特徴や経験があっても女性とは異なり、弱者男性の場合は馬鹿にされたり、差別の対象になったりしてしまう。 【画像】頭を抱える男性 そんな弱者男性の苦悩やリアルな実態を『弱者男性1500万人時代』(扶桑社新書)より一部抜粋・再構成してお届けする。彼らが「弱者」と呼ばれる状況にたどり着いてしまうのは一体なぜなのだろうか。
コミュニケーション弱者の男性は迫害されやすい
女性と比較して男性のほうが、孤独死などのように家族・地域・制度から切り離された人生の最期を迎えやすい。その理由として考えられるのは、コミュニケーション能力の差だ。 いわゆる女性は人と接するコミュニケーションが得意であり、一方で男性はそれが不得意。なので、結果として男性が孤立しやすいという説だ。だが、それは本当なのだろうか? コミュニケーション戦略研究家の岡本純子氏は、男女でコミュニケーション能力に差があるとはいえない、と語っている。男女のコミュニケーションについては、どちらかが優れている、劣っているというよりは、その「スタイル」が違うということが考えられるだろう。 コミュニケーション能力が低かった場合の結果は、男女で異なる。女性は何も話題のネタがなくてもコミュニティの輪に入りやすいが、男性の場合は「カネとコネとネタ」がないと相手にされないという。 筆者は婚活に励む男女を長年支援しているが、まったく同じように感じる。婚活では特に、男性側は積極的に行動することがよしとされる。最初にメッセージで女性に話題を提供して話を盛り上げ、デートの約束をする。そして、それっぽいよさげな店の候補を出し、当日は女性に対して話題を振る役割を担う。 対して女性はおしとやかさを求められるが、男性のような積極性は問われにくい。そのため、女性がコミュニケーション弱者だったとしても結婚につながりやすい側面がある。 たとえば、婚活をする男性から女性に対してよく挙がるクレームの一例が、 「女性がまったく話をしてくれなかった」 「女性が、はい、いいえくらいしか言ってくれなかった」 といったものである。 仮に男性がこのような対応をしたら、美男子や資産家であっても、結婚できる可能性はほぼゼロである。だが、女性の場合、コミュニケーションがイマイチでも美人なら、若ければ、あるいは資産など他の魅力があれば結婚できてしまうことがあるのだ。 さらに、男性は結婚できないだけでなく積極的にバカにされてしまう。ネットスラングで「チー牛」という言葉があるのをご存じだろうか。 チー牛とは、牛丼屋で「三色チーズ牛丼を注文する若い男性」の自画像が、オタク、ネクラに多そうだという偏見から広まったものである。 もともとはイラストを描いた方の自画像だったが、次第に差別意識を表明する者によって転載されるようになった。2024年1月現在「チー牛」で検索すると、「美人がチー牛に冷たいのは一種の自己防衛」「チー牛が率先して人を助ける姿を見たことがない」など、偏見に基づいた発言が多く見られる。 もしこれが男女で逆転していたらどうだろうか。「三色チーズ牛丼を食べていそうな女は、情けで優しくすると急につけあがる、距離感の詰め方が異常、仲良くなっても面白くなくて不快……」などとSNS上で書いたら炎上必至だろう。だが、少なくとも2024年1月現在、男性相手であればそうならないのが現実だ。 男性が弱者になりやすいのは、次で紹介する「加害者になりやすい」側面も大きく影響しているだろう。