2024年FIA F2第1戦サクヒール　アンドレア・キミ・アントネッリ（プレマ・レーシング／メルセデス育成）

　メルセデスF1のチーム代表を務めるトト・ウォルフは、ルイス・ハミルトンとメルセデスの2年契約に含まれる免責条項の背後に戦略的判断があることを示し、新星アンドレア・キミ・アントネッリに適用できる可能性のある、計算された賭けについて明かした。 【写真】2024年FIA F2第1戦サクヒール レース1　アンドレア・キミ・アントネッリ（プレマ・レーシング／メルセデス育成） 　ハミルトンとメルセデスとの契約延長は当初は簡単なものに見え、少なくとも2025年シーズンの終わりまでハミルトンのチームにおける地位が確保された。しかし、7度のF1世界チャンピオンであるハミルトンが、2025年にフェラーリに移籍するという衝撃の決断を下すと、二者の間には1年後に別の道を行くという選択肢があったことが明らかになった。ハミルトンには自身の将来を再評価する思索の機会が与えられており、メルセデスはこの条項によって、将来に向けて別のドライバー、すなわち17歳の天才アントネッリに対して門戸を開いておくことができた。 　メルセデスのジュニアドライバーである17歳のアントネッリは、イタリアF4やフォーミュラ・リージョナル・ヨーロッパ選手権でチャンピオンになるなど、印象的な経歴を誇っている。ジュニアカテゴリーで急上昇を果たしたアントネッリは、今シーズンのFIA F2選手権では垂涎の的であるプレマのシートを獲得し、将来有望なドライバーとしての地位を確固たるものにした。 　ウォルフは現在の状況を、2014年の同様の状況と比較した。それは、メルセデス内部に空いたシートがなかったために、マックス・フェルスタッペンとの契約締結に失敗したときのことだ。 「何年も前に、マックスにドライブさせる機会があった」とウォルフはオーストリアの放送局『ORF』に語った。 「当時それは不可能だった。単に我々にはコクピットが空いていなかったからだ」 「（ニコ・）ロズベルグとハミルトンが長期的に我々とつながりを持っており、レッドブルは当然そのチャンスをつかんだ。彼らはトロロッソでの契約を結び、翌年にはレッドブルでドライブする可能性があった。そうして我々は若いドライバーを失った。彼がどれほど成功したか、わかるだろう」 「そしてまさに、非常に高いレベルでドライブしているジュニアドライバーが現れたから、この選択肢をオープンのままにしておきたかった」 　メルセデスはアントネッリに強くコミットしているものの、ウォルフはこの若いイタリア人が2025年に空くハミルトンのF1シートに昇格する保証はないことを明言した。 「だからといって、来年にアントネッリを実際にマシンに乗せるわけではない。彼は17歳なので、少々早いかもしれない。しかし、これからの5年や10年を見据えて、私はこの選択肢を持っておきたかったのだ」 「ある意味で、彼は神童だ。彼はカートであらゆる勝利を収めて、その後F4に移った。彼はルーキーイヤーにすべての選手権でチャンピオンになり、その後レベルを上げてそこでもすべてを勝ち取った」 「F3でテストする時間があまりないという理由もあり、我々はF3を飛ばすことにした。代わりに、彼はF2に昇格することになる。これは彼にとって大きな飛躍だ。これらは本当にパワーのある大きなマシンだ。ほとんどのレースはF1のサポートプログラムの一部になっているので、そこでも全体をよく見ることができるだろう」 　ウォルフは、今シーズンのアントネッリの見習い期間に、メルセデスの2022年仕様のマシンを使ったF1テストプログラムが含まれていることを認めた。 「2024年に彼とともに大規模なテストプログラムを実施し、様子を見ていくことになる。彼は2025年に向けて準備ができるだろうか？それとも、2026年に向けてだろうか。状況は変わるだろうか？」 　ジョージ・ラッセルがメルセデスとの契約を2025年以降も延長すると仮定すると、2026年にアントネッリにレースシートを与えるには、チームは2025年に向けてひとりのドライバーと1年契約を結ぶ必要がある。ウォルフは「次の2、3レースで」状況を再検討すると述べている。 「経験に頼り、何か新しいことに挑戦したいものだろうか？　それとも、若手に焦点を当ててルーキーを擁するというリスクを冒し、このことを中長期的なパフォーマンスの観点から見なければならないだろうか？」 [オートスポーツweb 2024年03月05日]