『Starfield』初の大型DLC『Shattered Space』に秘められた宇宙の謎、さらなる今後の展開をBethesda Game Studiosに迫るスペシャルインタビュー! ヴァルーンで注目すべき場所は“孤児院”!?
新たな宇宙の謎はどのようにして生まれたのか!? 『The Elder Scrolls』(エルダー・スクロールズ)や『Fallout』(フォールアウト)シリーズでオープンワールドの可能性を広げ続けてきたBethesda Game Studiosが、25年ぶりの新規IPとして世に放った『Starfield』(スターフィールド)。 【記事の画像(7枚)を見る】 “もうひとつの世界で、もうひとつの人生を”というゲーム体験を実現してきたスタジオが総力を挙げて開発した本作は、Xbox Series X|S、PC向けに2023年9月6日に発売された。 『Starfield』の舞台となるのは、100を超える星系に1000以上の惑星が存在する“宇宙”そのもの。プレイヤーは好きな惑星を来訪し、自由に探索できる。宇宙の謎を秘めた希少な遺物“アーティファクト”を探し求める、最後の探検家集団“コンステレーション”。その一員として銀河を駆け巡るプレイヤーには、膨大なコンテンツが待つ。つねにアップデートが実施されており、“Creation Kit”の配信や新ミッション、武器の改良に弾薬クラフトとさまざまな機能が追加されている。 コロニー連合や自由恒星同盟、リュージン・インダストリーズにクリムゾン・フリートなど、さまざまな勢力の思惑がうごめく宇宙。その中でも“グレート・サーペント”を信仰して、多大な犠牲を出した紛争を引き起こしたヴァルーン家は、謎多き存在だった。そんなヴァルーン家に焦点を当てた本作初のDLCとなる『Shattered Space』が2024年10月1日に配信された。 宇宙を揺るがした紛争“サーペント・クルセイド”以降、平和の道を選んで表舞台から姿を消したはずのヴァルーン家(大使館はニューアトランティスに残されている)。一部の狂信者が過激な行為をくり返しているが、その足跡は明らかではない。しかし、とあるできごとをきっかけにプレイヤーはヴァルーン家の隠された本拠地にあるダズラの街へと向かうことになる。 そこで今回は、全世界の『Starfield』プレイヤーが待っていた『Shattered Space』に関して、公式トレーラーにも登場しているBethesda Game Studiosのスタジオデザインディレクター、Emil Pagliarulo(エミル・パグリアルロ)氏に直撃 。この壮大かつ謎に満ち溢れた“世界”についていろいろと訊いてみた。 DLCの最後はプレイヤーの選択次第に……! ――Bethesda Game Studiosにとって25年ぶりの新規IPとなった『Starfield』ですが、発売から1年が経ち、いまの反響はいかがでしょうか?: エミル: 幅広いプレイヤー層から、エネルギッシュな反響をいただきました。 『Starfield』の特徴は、非常に多くの領域を網羅し、たくさんのユニークな体験を提供していることです。ファンの方々は『Starfield』のどこに引き寄せられているのか……ファンは何を求めているのか? 何を期待しているのか? コミュニティーが持つアイデアは、私たちのアイデアとどこで交わるのか? そういったことを考えるのはすばらしいことですね。 追加要素や拡張コンテンツ、コミュニティーからの反応、そしてもちろんMODやCreation Kitなどがたどっている道のりを見ていると、とてもうれしく思います。 ――地上を走れるREV-8の導入は、多くのプレイヤーが待ち望んでいたものでした。なぜ2024年8月というタイミングで実装されたのか、その理由をお聞かせください。 エミル: じつは、本編の開発段階ではREV-8のことはまったく考えていませんでした。プレイヤーが歩いて探索するオープンワールドゲームには20年以上の開発経験がありますが、私たちはこれまで乗り物を作ったことがなかったんです。 もちろん、“やったことがないからできない”というわけではありません。『Starfield』は私たちが初めて製作したスペースシミュレーションですが、いままでやってきたことと違う点は、そこまでないだろうと考えていました。しかし、私たちはこの巨大で新しい“もの(thing)”……すなわち、宇宙空間を作り上げることで手一杯になったんです。そのため、開発当時に乗り物を作ろうとはまったく考えていませんでした。 もちろん、オープンワールドの惑星において、地上を走る乗り物の存在は完全に理にかなっていますし、プレイヤーたちがそれを求めていることも理解していました。 エミル: 本作におけるデザインのコンセプトに“NASAパンク”というキーワードがあったように、NASAの雰囲気を捉えるうえで、皆さんがご存じのクラシックなムーンバギーは、つねに重要な役割を果たしてきました。もちろん、 『Starfield』の“NASAパンク”の美学にも大きなインスピレーションを与えています。 そこから生まれたREV-8の大きくて分厚い車輪は、どのような地形にも対応可能です。さらに強力なブースターを搭載することで、惑星の重力が変化するゲームをさらにおもしろくしてくれていると思います。 とくに、アートディレクターのイストヴァン・ペリー(Istvan Pely)は、早い段階から「REV-8のようなバギーは『Starfield』にぴったりだ」と感じていたようです。REV-8の実装は彼にとって情熱を注ぐプロジェクトとなり、その結果は見ての通り、すばらしいものになりました。 エミル: リリースの時期を検討する際には、つねに多くの要素を考慮する必要がありますが、REV-8に関しては、できるだけ早くリリースしようという明確な決断を下すことができました。なので、REV-8が完成し、十分と思われる実践的なテストを終えたら(REV-8はどの惑星にも持ち運べるので、すべての惑星で実際に動作することを確認する必要がありました)、ファンに楽しんでもらうべく、すぐにリリースしました。 ――『Shattered Space』ではヴァルーン家の秘密に迫ることになりますが、本編ではあまりヴァルーン家のエピソードが語られなかったのは、このDLCがあったからでしょうか? エミル: ゲームの製作を準備する段階で、私がオフィスでよく話す会話のひとつに「では、物語においてプレイヤーが参加できる勢力はどうすればいいか?」というものがあります。 『The Elder Scrolls IV: Oblivion』までさかのぼると、Bethesda Game Studiosが手掛けるRPGのコンテンツの4割以上が“勢力”に関連しているといえます。たとえば、『Fallout 4』のB.O.S(Brotherhood of Steel)や、『The Elder Scrolls V: Skyrim』の盗賊ギルド(Thieves Guild)などがそれにあたります。『Starfield』の開発時には、かなりの数のプロジェクトで同じようなプロセスを経た開発経験を重ねていたので、現実的に考えてゲームに実装できる“勢力”の数については、かなりいいアイデアがありました。 そのひとつであるヴァルーン家は、『Starfield』ではおもに敵対者として見られていますが、私たちは彼らに深いストーリーがあることを知っていました。しかし、すでにコロニー連合、自由恒星同盟、紅の艦隊(別ルートと言えますが)、そしてメインクエストを彩るコンステレーションやリュウジン・インダストリーズという“勢力”が存在しており、それぞれがお互いを引き立たせるストーリーが練り上げられていました。 しかし、有人星系(The Settled Systems)におけるヴァルーン家の立場を考えたとき、ヴァルーン家のテーマはほかの勢力と比べて、非常に異なっていることに気づきました。また、彼らの存在をゲームで正しく描くには、アートの観点から見ても独自のリソースが必要であることもわかりました。ヴァルーン家の物語は非常に説得力があり、有人星系にある多くの文化やイベントにとって重要な軸になると思いましたね。 ――『Shattered Space』にはコズミックホラーのようなテイストを感じます。そもそもリアリティーを追求している『Starfield』 では挑戦的な内容と思えますが、この路線を選択した理由は?: エミル: 確かに、ヴァルーン家はコズミックホラーの土台の上に成り立っています。彼らは“グレート・サーペント”と呼ばれる天上の存在を崇拝しており、ヴァルーン家をプレイヤーが参加できる勢力にするためには、プレイヤーはその側面を調査しなければならないということになります。 メインクエストでは、“銀河とは真に多くの秘密を有する、奇妙で未知の場所である”という考えをプレイヤーに紹介できました。これはエキサイティングなことです。人類がいままで考えたことのないような技術がそこにはあり、加えて神学的な要素もあるかもしれない。ヴァルーン家が持つ、そんなユニークな信念に焦点を当てることで、本DLCのアイデアをさらに推し進めることができました。 ――まだ未プレイの方に向けて、あらためて本DLCのストーリーラインを教えてください。また、DLCをプレイするには何かしらの条件はありますか? エミル: DLCのストーリーですが、謎のスターステーションが突然、有人星系に現れます。それはヴァルーン家のものであり、無人に見えるのですが、プレイヤーはすぐに「このステーションは何かがおかしい」と気づき、探索を進めることになる。そこでヴァルーン家の本拠地となる“ヴァルーン・カイ(Va'ruun'kai)”の存在を発見します。 ヴァルーン家では奇妙な重力ジャンプの実験を行っていたようですが、それは創設者であるジナン・ヴァルーンが“グレート・サーペント”と接触したと主張した際に行った、ジャンプを再現しようとしていたことがわかります。そして、その実験は成功しませんでした(と言っておきましょう)。いまのヴァルーン家はさまざまな問題を抱えており、あなたの助けを必要としています。 エミル: 本DLCはキャラクターレベル35以上でのプレイが推奨されていますが、本編のメインクエストをクリアーしている必要はありません。DLCの導入ミッションとなる“小さな一歩”をクリアーすれば大丈夫です。DLCを楽しみたいプレイヤーの障壁をできるだけ少なくしたかったのでレベルが35以下でもプレイできますが、間違いなく難度は高くなります。 ――ヴァルーン・カイには50を超えるロケーションには、どのようなバリエーションが用意されているのでしょうか? また、ヴァルーン・カイのコンセプトを教えてください。 エミル: 私たちはヴァルーン・カイを、ヴァルーン家が持つより“異質”な雰囲気とその美学に合うように、視覚的にもユニークなものにしたいと思っていました。その過酷な環境は少し容赦がないと感じるかもしれませんが、それもまた独自の美しさを持っています。 そして、その美しさの一部であるスタイルや建築などは 独特のヴァルーン文化がもたらしたものです。ヴァルーン家は間違いなく、有人星系において通常の境界の“外”にあることを感じるでしょう。 ロケーションは自然の洞窟や地形だけでなく、軍事施設が絶妙に融合しています。街全体が、とある“イベント”によってほぼ破壊されており、地形も少し変わっていますが、プレイヤーはさまざまなロケーションに到達するために、独自の方法を見つけることができます。 ヴァルーン・カイにあるさまざまな貴族の家も含め、すべての物語は“イベント”の影響を受けていますが、それらは必ずしもメインストーリーに直接関連するものではありません。大きな話もあれば、小さな話もあります。ヴァルーン家における“家族ゲンカ”の中には、真のヴァルーン流とは言えない終わりを見せるものもあるでしょう。 ――ヴァルーン・カイの広さはどれくらいをイメージすればよろしいでしょうか? たとえば、ヴァルーン・カイの首都であるダズラはアキラと同じような密度の濃い都市になっていますか?: エミル: 全盛期のダズラなら、アキラはいい比較対象となったでしょう。しかし、DLCでのダズラは全盛期ではありません! ある“イベント”のせいで街の多くが消えてしまったか、永久に変わってしまいましたから。とはいえ、ヴァルーンの人々は屈強な民族なので、街の中にだけ建物を建てたわけではありません。城壁の外の地域にも建物や施設があります。 ――不可思議な存在に対処できる特殊な新武器なども気になります。 エミル: ヴァルーンの新しい武器をいくつか導入していますが、それらは少し重く、攻撃力もやや高いものになっています。 もちろん、近接戦闘にも力を入れていますが、先ほども言った通り、本DLCはレベル35以上に推奨されているので、プレイヤーはすでにいくつか伝説の武器や“スターボーン(Starborn)”の力を持っている可能性は高いですね。プレイヤーが特別なことをしなくとも、お気に入りのキャラクターでDLCをプレイできるようにしています。 ――本DLCのストーリーラインによって、本編のストーリーや環境に影響が発生するのでしょうか? エミル: DLCの最後にはヴァルーン・カイから発せられる“銀河の波紋”とでも呼ぶべきものがいくつか登場し、その詳細はプレイヤーの選択次第となります……これ以上はネタバレになってしまいますね! ――本DLCでもっとも注目してほしいポイントやロケーション、シチュエーションは?: エミル: カスタムメイドの拡張コンテンツという点に重きを置いた開発をしているので、単に「全部です!」と言うのは簡単ですが……場所をひとつ選ぶとしたら、それは……“孤児院”とだけお伝えします。 私たちは何よりもまず、このゲームを愛してくれて、より多くのコンテンツを求めている『Starfield』の熱心なファンのために『Shattered Space』を作りました。そして、かなりの数のプレイヤーがヴァルーン家に興味を持ってくださり、彼らに焦点を当てた本DLCでヴァルーン家が、プレイヤーが参加できる勢力になることを望んでいました。 エミル: 手作りの環境を歩き回り、特別に作成されたコンテンツをたくさん見つけることができたBethesda Game Studiosの過去のゲームと同様に、 『Starfield』のプレイサイクルが1回きりの短いものになることはないと、私たちも認識していました。 『Starfield』は、あなた方を手作りのコンテンツにご案内します。メインストーリーを外れたときは自動生成の割合が多いコンテンツに遭遇しますが、本DLCはその両方を兼ね備えており、私たちは皆さんにプレイしていただけることを本当にうれしく思っています。 ――今後もさらなる追加のDLCを期待していてもよろしいでしょうか? エミル: いま自信を持ってお伝えできるのは、25年ぶりとなる新しいIPを作り出したからといって、リリース後にそのまま放置するつもりはない、ということです! 私たちはつねに 『Starfield』の“つぎ”を考えています。その想いは、要望の多かったシティマップやREV-8 、”トラッカーズ・アライアンス(The Trackers Alliance)”という勢力の導入など、いままでに行ったすべての無料アップデートによって証明されていると思います。 私たちは「もっと多くのことを積み重ねていくのか?」ではなく、「私たちが創造的に求めるものは、コミュニティーが求めるものと一致するのか? 私たちは何でもできる。では、つぎに何をすべきか?」ということを、進みながら考えています。ご期待ください。