名字を守るため「事実婚」選ぶZ世代。親の説得、複雑な手続き…24歳女性起業家の奮闘記
事実婚まで1年半、実践した5ステップとは
事実婚とは、婚姻届を出していないが、お互いの意思で結婚の状態にあるという「事実」を構築していく結婚の仕方である。つまり第三者から見て「結婚している」と捉えられる「事実」を積み上げていくことが重要だが、どんな「事実」を積み上げていくかは、カップルによってさまざまであり、決められた方法はない。 そのため、法律婚のカップルのように結婚した日(婚姻届を出した日)が明確にあるわけではなく、事実を積み重ねていく行為によって結婚するという特徴がある。 なお、この記事で紹介するプロセスは、あくまで私とパートナーが「事実」をつくるために選んだものであることに留意して欲しい。 私たちは、主に5つの方法で、事実を積み重ねていった。 1)同居と住民票の変更まず二人で暮らしている(同じ世帯で生計を同一にしている)ことを示すために、同居の上、住民票の続柄を変更した。住民票の続柄は、世帯主と妻(未届)もしくは夫(未届)という形で記載することができる。この表記に変更する場合、他に結婚している相手がいないか確認するために戸籍謄本が必要になった。 2)パートナーシップ宣誓制度の利用パートナーシップ宣誓は、当初、性的少数者のパートナーシップを公的に認めるための制度だったが、最近では異性カップルの利用も許可する自治体が増えている。 事実婚のカップルは住民票で結婚している「事実」を示すことはできるものの、住民票を常に携帯しているわけではない。病院に緊急で付き添う時など、「事実」を証明するのが困難な場合も発生する。 パートナーシップ宣誓では、関係性を証明でき、かつ、健康保険証のような持ち運びに便利なサイズのカードを取得できるのが大きなメリットだ。私たちは事前に異性同士でも利用可能か自治体に連絡し、手続きに向かった。パートナーシップ宣誓の手続きでは、戸籍謄本と住民票が必要になった。 3)保険や選挙の書類の保管2人の名前が連名でくるため、郵送されてきた日付で、同居している事実を示すことができる。そのため生命保険や選挙など、信頼性の高い書類や公的な書類が連名で郵送されてきた時は保管して、その時点で同居しているという事実を今でも積み重ねるようにしている。 4)公正証書最も大変だったプロセスといっても過言ではない。公正証書とは公文書の一つで、公証人と呼ばれる法律のプロの立ち会いのもとで契約することで、契約における法律関係を明確にできる。つまり、結婚しているという「事実」に法的な信頼性を持たせることができる。 私たちは主に「医療上の判断の委任」「相続などの死後事務」「離婚した場合の財産分与」「子どもが生まれた場合の認知や親権」「親族関係や父母との同居」について話し合い、公正証書を作成した。 はじめはインターネットで事実婚の契約書のテンプレートを集め、自分たちの理想にあう文章になるよう修正し、二人で合意していった。毎週、3から5つの条文を決めることを目標に時間を設けて話し合っていったため、情報収集を含め、納得する条文を作成するのに半年もの時間がかかった。 その後、契約時点で互いが所有している財産を整理し、契約書の形に仕上げ、公証人に確認・修正してもらった。契約当日は公証役場で、公証人に条文を全て読み上げてもらい、お互いに印を押して、契約完了である。ここまで1年の道のりだった。
江連千佳