アンタッチャブル柴田が絶賛「こんなアホ、初めて見た」“高学歴化”トレンドのM-1だからこそバッテリィズが愛された「生きるのに意味なんかいらんねん」
オードリー若林の“名コメント”
さらに言えば、彼らの漫才の中にはエースの人間的な優しさもにじみ出ている。2本目の漫才の中で、昔の偉人の墓が大きいのはそれだけ偉大だからだという話をされて、自分の祖父の墓が小さいと言っていたエースは「俺のおじいちゃんもおもちゃいっぱい買ってくれたから! 俺のおじいちゃんも偉大やから!」と返した。その無邪気な一言は単に笑えるだけではなく、感動をもたらすようなところもあった。泣かせる要素はあるが、あざとさは全くない。この漫才におけるエースは「バカだけどめちゃくちゃいいやつ」という漫画の主人公のような理想の人物像を体現する存在だった。 審査員のオードリー・若林正恭は「小難しい漫才が増えてくる時代の中で、ワクワクするバカが現れたな、と思って」とコメントした。たしかに、今年の『M-1』で優勝した令和ロマンも、バッテリィズに次ぐ3位に食い込んだ真空ジェシカも、偏差値の高い大学出身の高学歴芸人であり、いずれも学生時代からお笑いの活動を続けてきた。 そんな彼らの知的な漫才に対して、1人のバカが手ぶらで立ち向かった。常識や教養を持たないバッテリィズのエースは「人間味」だけを武器にしてインテリ芸人たちと互角に渡り合い、準優勝という立派な結果を残した。 もちろん、常識側に立って漫才の会話の主導権を握る寺家の手綱さばきが見事だったことは言うまでもない。草野球でピッチャーとキャッチャーのバッテリーを実際に組んでいたことが芸名の由来であるバッテリィズは、その名の通り絶妙なコンビネーションを発揮していた。 『M-1グランプリ』は漫才という話芸の最高峰の大会であると同時に、漫才師たちが織りなす人間ドラマの舞台でもある。バッテリィズが見せてくれた「クリティカルなアホ」の人間ドラマは、多くの人々にそよ風のような爽やかな感動をもたらしたに違いない。 <《新審査員》編へ続く>
(「Number Ex」ラリー遠田 = 文)
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