『ビリオン×スクール』同世代の中でも群を抜く上坂樹里の演技 山田涼介のキラーフレーズも
ドラマ『ビリオン×スクール』(フジテレビ系)第2話のテーマとして取り上げられるのは、「イジメ問題」。第1話では加賀美(山田涼介)が担任を務める3年0組の西谷翔(水沢林太郎)の「家庭内問題」がフィーチャーされていたものの、初回ということもあり、やはり加賀美のキャラクターや『ビリオン×スクール』自体の強烈なコメディ色、さらにサプライズ出演となった神木隆之介が演じる謎の校務員・内巻雫が強く印象に残っていたのは筆者だけではないだろう。今回も職員室では溝口(坂口涼太郎)、土橋(永野宗典)、堺(MEGUMI)のアドリブ合戦が繰り広げられているが、真正面からイジメについて向き合ったメッセージ性の強い回でもある。 【写真】手を広げて喜ぶ加賀美(山田涼介) 第2話でスポットが当たるのは、梅野ひめ香(上坂樹里)。別クラスでいじめに遭い、逃げるために自ら進んでゼロ組に転落してきたが、主犯格である東堂(大原梓)をはじめ、松下(倉沢杏菜)、城島(奥野壮)、紺野(松田元太)から執拗ないじめを受けていた。第1話のラストで加賀美の頭上に降ってきた教卓は、梅野が東堂たちに命令されてやったもの。東堂は絵都学園校長・東堂真紀子(水野美紀)の娘という最悪の構図でもあるが、梅野は逆恨みされたくない、教師から面倒がられたくないという理由から一向にいじめの事実を認めようとしない。グループチャットでの確たる証拠があったとしても、副担任の芹沢(木南晴夏)が手を差し伸べても。 そんな状況を打破しようと「やめろよ」と異議を唱えたのが西谷。しかし、彼もまた城島に返り討ちに遭ってしまう。私だけがいじめに遭えば、と思っていた梅野にとっては最悪の事態だ。だが、いじめの現場となっていた東堂らのアジトが入っているビルごと買い取り、破壊するというビリオネアだからこそできる大胆な手段に加賀美はでる。“破壊”という強行突破は同じ学園ドラマの教師『GTO』(カンテレ・フジテレビ系)の鬼塚とも共通しており、加賀美が生徒を救う言葉を届けるという部分は『ビリオン×スクール』の核となる部分である。 「お前の本心はお前を守りたがってるということだ」「人には誰でも自分を一番大事にする権利がある」「ほかの全てから逃げたとしても、決して自分からは逃げられない。だから、自分を傷つける自分であってはならないんだ」「お前は何も悪くない。堂々と自分を守れ」 加賀美の言葉、さらにAIグラスによって自分の顔に変換された城島や西谷らを見て、梅野は初めて「私を傷つけないで」と反抗する。手に持っているのはお守りに忍ばせていたカミソリ。死ぬために持っていたカミソリが、自分を守るための武器に変わった瞬間だ。 キラーフレーズの「震えて眠れ!」が誕生した、少々傲慢な態度が気になる加賀美を演じる山田涼介の芝居は乗りに乗っており、その加賀美の口を塞ぐ芹沢とのコンビネーションも抜群だが、第2話は生徒たちの演技も多く印象に残った。特筆すべきは梅野を演じた上坂樹里。直近では『となりのナースエイド』(日本テレビ系)、『あれからどうした』(NHK総合)などで高い演技力を発揮しているが、今回もぽろぽろと調節したように流れ出る涙やカミソリを持った緊迫した表情など、同世代の中でも群を抜いている印象であり、この回で選出されていることにも納得できる。東堂を演じる大原梓の高圧的な態度、少々抜けた紺野の秘めたる思いを体現する松田元太。『VRおじさんの初恋』(NHK総合)でほぼ主演とも言える役所だった倉沢杏菜が、松下としていじめっ子役を演じていることも驚きを禁じ得ない。 ラストシーンで西谷と梅野だけが起立と礼をする光景からは、これから一人ずつ更生されていく、もしくは問題が解決されていくことが予想されるが、第2話では加賀美の過去が芹沢と過ごした記憶と共に明らかになった。そこには未だ多くがベールに包まれている内巻も関わっているのではないか、という予感がしている。
渡辺彰浩