大谷効果だけではない!? 韓国開催のパドレスvsドジャースのチケットが争奪戦になっているのか?
3月20日と21日、ソウルのコチョク(高尺)スカイドームで開催される、韓国初のメジャーリーグ公式戦、パドレス対ドジャーズの試合のチケットが入手困難の状況になり、売り切れとなったことが報道された。 【一覧】大谷翔平 高校時代からの全成績 パドレスにはキム・ハソン(金河成)内野手がおり、3月の試合もキム・ハソンの凱旋試合という意味合いが濃かった。キム・ハソンは、21年に韓国プロ野球のキウムからパドレスに移籍。二塁手を中心に内野の各ポジションをこなし、昨年はユーティリティープレーヤー部門でナショナルリーグのゴールデングラブ賞を受賞している。 対するドジャースも、韓国人最初のメジャーリーガーであるパク・チャンホ(朴賛浩)が所属していたチームであり、韓国人に最も馴染みのあるチームだ。現在FAで所属チームが決まっていない状況だが、韓国の怪物左腕であるリュウ・ヒョンジン投手(柳賢振)も、アメリカでのキャリアはドジャースから始まっている。そこに大谷翔平が加入したのだから、韓国でも大騒ぎになっている。 大谷が高尺スカイドームで行われる開幕戦に出場した場合、韓国でプレーするのは、花巻東時代の2012年、ソウルで開催されたU-18世界選手権の日本代表として出場して以来である。この時大谷は、岩手大会の決勝以来実戦から遠ざかっていたため本調子でなく、日本代表で目立っていたのは、当時大阪桐蔭だった藤浪 晋太郎投手(オリオールズ)の方だった。
首都・ソウルなど韓国はドーム建設の流れ
ドジャース対パドレスの試合のチケット争奪戦を激化させたのは、大谷の存在に加え、高尺スカイドームの座席が1万6000席程度しかないことも大きい。 かつてソウルの中心部に高校野球のメイン球場として使われていたトンデムン(東大門)野球場があったが、ソウル市の再開発事業のため、2007年に撤去された。ソウル市は代替の球場を作ることを約束し、ソウル市西部、ちょうどインチョン(仁川)に向かう途中にあるコチョク洞に用地を確保した。当初は完全なドームでなく、かなりの部分を屋根で覆った半ドームの球場を作る予定であった。しかし、08年の北京五輪で金メダルを獲得し、09年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で準優勝して野球人気が高まると、完全ドーム形式に設計を変更した。15年の秋に完成すると、高尺スカイドームやや北側にあるモクトン(木洞)球場を本拠地としていたネクセン(現キウム)が使用するようになり、高校野球は主にモクトン球場で行われている。しかし高尺スカイドームは、もともと高校野球の球場として作られていたため、球場のキャパシティはそれほど大きくない。 なお、現在LGトゥサン(斗山)の本拠地として使用されているソウルのチャムシル(蚕室)野球場は、来年のシーズン終了後、取り壊され、31年の完成を目指し、3万人収容 規模のドーム球場を建設する予定である。またインチョンを本拠地とするSSGは、新たに2万人収容規模で、ショッピングセンターなどと一体となった新ドーム球場を建設する予定だ。SSGとはシンセゲ(新世界)グループのことで、百貨店やディスカウントストアなどを経営している。 ソウル首都圏は秋ごろから寒さが厳しく、ドーム球場建設は悲願であった。けれども費用の問題などから、なかなか建設されなかった。近年、高尺スカイドームのほかにも、新たなドーム球場が建設されようとしているのは、韓国の経済発展、野球人気の高まりに加え、K-POP人気の世界的な高まりも大きい。これまで大型コンサートは、ソウルのワールドカップ競技場などで行われていたが、天候、気候の影響を受ける屋外より、収容人数が多いドーム球場を求めるのは、当然の流れである。 (文=大島裕史)