『朽ちないサクラ』原廣利監督 現場だからこそ生まれるものがある【Director’s Interview Vol.415】
バックショットに込めたもの
Q:脚本としてはクレジットされていませんが、脚本作りには携わられているのでしょうか。 原:基本的に携わっています。僕自身は書きませんが、初稿が上がってから決定稿まで、脚本打合せには毎回参加していました。 Q:原作を脚本化するにあたり、何かリクエストは出されましたか。 原:脚本に関してはそこまでリクエストは出しませんでしたが、『朽ちないサクラ』というタイトル通り“桜”を印象的に見せたかったので、その時期に合わせた撮影を希望しました。原作では桜の描写がほぼ無かったのですが、映像ではしっかりと見せていきたかった。そこはすごく気にしたところですね。 Q:撮影監督もやっていた原監督らしく、カメラワークやアングルにこだわりを感じました。いつも画コンテなどを作られているのでしょうか。 原:コンテはまったく描きません。絵が下手なので(笑)。『帰ってきた あぶない刑事』は佐藤匡さんというカメラマンにお願いしたのですが、彼と僕は日本大学藝術学部で一緒に映画を作っていた同級生なんです。お互いプロになってからも一緒にやっていて、すごくコミュニケーションが取れる相手。僕らは1シーンに対して引き画を撮って、寄り画を撮ることが多いのですが、ほぼそれしか言いませんね。あとは言っても「ここでトラックインしたい」くらい。カメラマンの気持ちでやって欲しいので、結構お任せしています。そういう信頼している人にお願いすることが多いので、あまり細かいことはいつも言っていません。 『朽ちないサクラ』の撮影は橋本篤志さんにお願いしました。彼とは「RISKY」(21 TV)という深夜ドラマで初めてご一緒しました。彼のこれまでの作品を観て「すごくいい画を撮る人だな」と、お声がけさせてもらったのですが、想像通りとても良かった。そこからまた「真夜中にハロー!」(22 TV)という、ハロー!プロジェクトの歌を題材にした、PVと物語とリンクさせる形のドラマもお願いしたのですが、それもまた良かった。「次は映画を一緒にやりたいですね」と言っていて、今回お願いすることが出来ました。 Q:人物を背中から捉えたショットが度々出てきて印象的ですが、何か込めたものはありますか。 原:バックショットって表情が見えないから、人物が何を考えているか分からない。だからこそ背中で感情を語ることが出来る。それを各人物に多用していくことで、この『朽ちないサクラ』の見えない怖さや、不穏な感じを出したかったんです。普段からバックショットは結構使うのですが、今回はより多用しました。観客から表情は見えないけれど「この人物はこう考えているのではないか」という、誘導になればいいなと。そこはすごく意識したところです。
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