ロング客を引き当てた万収にこそタクシー運転士の醍醐味アリ! 領収書や乗務日誌を記念保管するドライバーまでいた
いまでは長年のノウハウがなくても稼げる!?
いまは乗務日報もデジタル化されているが、過去に手書きの乗務日報だったころには、大当たり(営収[営業収入]がよかった)した日の日報をコピーして保管する運転士さんも多かったようだ。どのような動きをして高額な営収になったかを振り返ることができるようにするためとも聞いている。 筆者もたまに長距離利用すると前述したが、そのときほぼ必ず運転士さんから聞かれるのが、「どのぐらいの頻度でロング利用するのか」、「利用するとしたら時間や乗車場所は同じか」といったことを聞かれる。筆者が過去に聞いた話では、「午前3時の銀座の女」という話が広く伝わっていたという。午前3時に銀座の決まった場所から乗って長距離利用する女性がいて、運転士の間で争奪戦となっていたとのこと。 いまは大手や準大手を中心に配車アプリサービスに加盟していることが多い。そんななか日曜のある日、新宿駅西口の妙な場所に複数のタクシーが駐車しているのが目に入った。どうも、配車アプリによる配車要請を待っているようであった。城東地区(下町地区)よりも、とくに城西地区はそもそも距離の長い利用が目立つとされているようだ。 たとえば世田谷区の用賀から渋谷駅といった利用や、成城学園前駅近くから羽田空港までといった利用がとくに早朝や日曜日には出やすいようである。世田谷の配車要請には新宿駅近くからでは少々対応は難しいかもしれないが、渋谷や中野、世田谷区の都心寄りの一部などの居住地域の配車要請に対応するため待機していたようだ。 ただし、「過去にロングの客を当てた」からといって、同じ場所で再びそのようなビッグチャンスに巡り合う確率は少ないとも聞いている。 さらに、配車アプリが普及するなかでは、長年の運転士経験に基づくノウハウの確立なくして稼ぐことも可能となってきた。ただ偶然と表現してしまうこともできてしまうが、ロング客を引き当てたり、そのようなロングもあって稀に見る高営収になったときの充実した気もちは、実際タクシーのハンドルを握らなければわからない醍醐味のひとつでもあることは、今回乗り合わせた老齢な運転士さんの目に見えてうれしそうな表情からも理解できた。 社会のデジタル化は、年齢や性別に関係なく生活を豊かにする側面もあるようだ。タクシーの世界でも、古くは車両のAT(自動変速機)化、そして最近では大手や準大手を中心に広がる配車アプリの普及により、女性運転士も目立って増えてくるなど「新しい風」が吹いている。ただし、単にデジタルツールに頼るだけではなかなか思った稼ぎを得ることはできない。そこはやはりどのように自分なりに使いこなしていくかというところがある。 また、業界では「お化け」などとも呼ばれる、予期しないところで乗車してくるロング客のようなサプライズもまだまだある様子。そこにはタクシー運転士という仕事の醍醐味があるようだ。
小林敦志