街灯に群がる虫、実は光に向かっていない?!→虫の種類によって異なる理由
夜になると、街灯などの明るい光に虫が群がる。どうして虫は光に集まるのか。昆虫に詳しい島根県立三瓶自然館サヒメルの皆木宏明研究員(49)は「光に集まろうと思って飛んでいるわけではない」という。一体どういうことなのか。謎に迫った。 【写真】糸くず?食中毒を引き起こす恐ろしい寄生虫です ■どの昆虫も同じ理由ではない 皆木研究員は、虫が光に集まるのは複数の理由が考えられるが「結論から言えば、完全には分かっていない」という。 街灯など人工的な光は自然界にはなく、昆虫の本来的な習性と照らし合わせて解明するのは難しい。 さらに、生態が異なる多くの種類の昆虫が集まっており、同じ理由で寄ってきているわけではないと明かす。 ■人工的な光ではうまく飛べない 一つの可能性として考えられるのは、虫が地面と平行に飛ぼうとした結果、光に集まっているように見えるとの説だ。 羽がある昆虫は、背中側に明かりがある状態で飛ぶことで、地面に対して平行に飛んでいると認識する。夜行性の種類は、本来は月明かりを背にしているが、月より明るい人工的な光があると、それを背中に向けて飛ぼうとするという。 昆虫が街灯の周りを回って跳んでいるように見えるのは、街灯の光を背に向けて飛ぼうとした結果、光から離れられなくなっているからだと考えられる。皆木研究員は「光に向かって飛ぼうとしているわけではなく、人工的な光だとうまく飛べず、結果的に集まっているように見えてしまう」と分析する。 セミやトンボなど日中に活動する昆虫は、出口を探して暗い場所から明るい場所に向かう習性が影響している可能性もある。夜に休んでいても光の明るさで目を覚ましたり、風が強くて木から落ちたりすると、人工的な光に集まるからだ。 一方、明るい場所を避けようとする種類が、逆に光の周辺に寄ってしまうことがあるという。目の錯覚により光の周辺は対照的に暗く見えるため、虫は暗い方に飛んでいるつもりでも、結局は光の周りに集まってしまうという理屈だ。 気象条件も関係するとされる。気温と湿度が高いと昆虫の活動は活発になる。月の明るさも関係し、曇りや新月のときは人工的な光に誘引されやすい傾向もある。 ■強い光は生態系に影響も 虫が離れられなくなるほどの強い人工的な光は、生態系に影響を与える恐れがある。 虫は光に誘引されると、その場を離れられず、食料の調達に行けなくなり、繁殖ができないまま死んでしまう。大きな昆虫は、タヌキやカラスといった天敵に食べられてしまう恐れもある。 昆虫を取り巻く生態系は変わっている。都市部など夜でも街全体が明るい場所では、日中にしか鳴かないセミがまだ夜ではないと認識し、夜も鳴き続けるという本来の習性とは違う行動を見せている。 ■虫が寄らないLED 近年は発光ダイオード(LED)の照明が増え、昆虫への影響は軽減している。蛍光灯や水銀灯と違いLEDは紫外線をほとんど含まないため、紫外線がある場所を明るいと認識する昆虫は近づかない。皆木研究員は「虫が寄りつきにくい対策も進んでおり、生態系に与える影響は少なくなっている」と述べた。 (まいどなニュース/山陰中央新報)
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