中国が世界最大の海上空港と水力発電所建設へ。過去最大3兆元特別債発行で景気テコ入れ
経済が低迷する中国が景気浮揚策の一環として2025年、過去最大規模となる3兆元(約64兆円)相当の特別国債を発行する。景気のテコ入れを強化している中国はほかにも、「世界一」とうたい文句に、同国北東部の沖合で人工島に浮かぶ世界最大の海上空港建設を進めており、さらにチベットでは世界最大級の水力発電ダム建設を計画している。 【全画像をみる】中国が世界最大の海上空港と水力発電所建設へ。過去最大3兆元特別債発行で景気テコ入れ ロイター通信によると、特別国債は昨年の発行規模1兆元から大幅増額され、調達資金は消費促進を狙った補助金プログラムや企業の設備更新、技術革新をけん引する先端分野への投資などに充てる。 中国政府の関係筋が同通信に語ったことによると「2つの主要な」プログラムと「2つの新しい」プログラムに約1兆3000億元(約27兆8000億円)充てられ、電気自動車(EV)やロボット、半導体、グリーンエネルギーなど「新生産力」と呼ばれる先端製造業に1兆元(約21兆円)余り、残りは大手国営銀行の資本増強に振り向けるという。 一方、米国を追い抜いて世界最大の航空市場を目指す中国は、遼寧省大連市金州区の沖合に世界最大の海上空港「大連金州湾国際空港」を建設中だ。空港には滑走路4本と旅客ターミナルが20平方キロメートルの人口島に計画されている。完成すれば日本の関西国際空港(10平方キロメートル)と香港国際空港(12.48平方キロメートル)を抜き、人工島に建設された海上空港としては世界最大となる。 米CNNは空港建設を手掛ける企業の技術責任者が地元国営メディアに語った話として、「建設には大変な困難が伴う。このプロジェクトは地質的な条件が複雑で掘削も難しく、高い品質が求められ、建設スケジュールもタイトだからだ」との見解を伝えた。 人口608万人の大連市の大連周水子空港は日本や韓国に近いことから、輸送拠点という重要な役割を担ってきた。そのため、同空港はこれまで数度の拡張工事が行われてきたが、受け入れ容量はすでに最大に達しているという。 CNNは、「中国は航空業界で、人工島の海上空港として世界最大という新たな名声を加えようとしている」と指摘。その上で、建設中の新空港側は、最終的に年間54万便の発着と8000万人の利用客を見込んでおり、第1段階が完了する2035年に開業予定になっている。 中国はまた、チベット自治区のチベット高原に端を発する、世界で最も源流の標高が高いヤルンツァンポ川の下流に世界最大級の水力発電ダム建設を計画。政府は2024年12月25日、正式承認した。 国営新華社通信によると、ダム建設は「中国の二酸化炭素(CO2)排出量削減目標の達成や、関連産業の発展、チベットの雇用創出」が狙いだとしている。その建設費は、中央部・湖北省宜昌市三斗坪にある超巨大ダム「三峡ダム」の2542億元(約5兆4000億円)上回るとされる。 この発電所は、「英国や台湾の電力消費量に匹敵する70ギガワットのクリーンエネルギーを生成し、現在世界最大の発電所である三峡ダムの発電量の3倍に相当する」としている。 ロイター通信によると、当局は同計画によって移住させる住民数や、地域の多様な生態系に対する影響などを明らかにしていないが、環境や下流の水供給には大きな影響を与えることはないとしている。 だが、近隣国のインドとバングラデシュは同計画に対する懸念を表明。地元の生態系だけでなく、下流の川の流れや流路をも変える可能性があるとみられているためだ。 地球上で最も大規模で深い峡谷を刻み、ヤルザンブ大峡谷を形成するヤルンツァンポ川は、南下してインドではブラマプトラ川と名前を変え、同国のアルナーチャル・プラデーシュ州とアッサム州に流れ込み、バングラデシュに入るとジョムナ川と再び名を変えて、最終的にはガンジス川と合流し、ベンガル湾へと注いでおり、計画が環境に与える影響の有無が注目されそうだ。
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