「失敗から本当の血肉ができていく」内野聖陽56歳、チームワークの大切さと“若手俳優”に対する想い
監督と完成させていった脚本は14稿に
――『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』では、真面目な税務署職員の熊沢二郎が、詐欺師と手を組んで、10億円を脱税している権力者に挑んでいきます。オファーを受ける際、「撮影前にがっつりコミュニケーションが取れるなら」とお話されたとか。 内野:上田慎一郎監督(『カメラを止めるな!』)は、打ち合わせやリハーサルをしっかりやられてから撮る方だと聞きました。今回もそうした時間が持てるかどうか、不安を抱えてらっしゃったようでしたし、僕もやりたいのならやったほうがいいと思うタイプなので「それはやったほうがいい。上田くんがやりたいように」と伝えました。僕が演じた熊沢というキャラクターに関する話から始まって、岡田(将生)くんともセッションしたりしながら作っていきました。 ――最初の台本に、内野さんがたくさん付箋を貼られていたと。 内野:この作品は、韓国のテレビドラマが原作なんですけど、もともと16話あったものを、ひとつの映画にしていく必要があったので、大変な作業だったんです。最初のお客さんとして、純粋に台本を読んで浮かんだ疑問をひとつひとつぶつけていきました。改稿されていくたび、どんどん物語の精度が上がっていきました。ほかの作品でも、台本は何稿も重ねられるものですが、これほど話した内容以上のものに磨きをかけ、削ぎ落としたりしてくる人は見たことはありませんでした。結局、14稿まで行ったのかな? ――すごいですね。撮影前の打ち合わせの場には、タッグを組むことになる詐欺師・氷室マコト役の岡田さんも参加されてたんですね。 内野:岡田くんが参加したときも何回かありました。そこで上田さんと「このセリフはああだ、こうだ」と修正していきました。
ラスボスを演じた小澤征悦さんの芝居に「あっぱれ!」
――ラスボスと言うべき権力者の橘を演じた、小澤征悦さんとの対決に変化が見えていくのも面白かったです。 内野:この映画の一番の大黒柱は、実は僕が演じた熊沢ではなくて橘だと思っています。嘘をどれだけリアルに持っていくか考えたときに、巨悪がいないと成立しませんからね。僕は小澤さんとは何度か共演していますし、ビシっと決めるところを決めてくれる方なので、橘を小澤さんがやってくれて良かったなと。たとえば僕が小澤さんから頭にワインをかけられるシーンがあるんですけど、そこも本当に上手にかけてくださいました(笑)。 ――上手に(笑)。 内野:スタッフさんが事前にカメラテストでやってくれたりしていましたが、小澤さんが本当に上手に計算しながらかけてくれて。本番で「OK!」となったとき、僕より小澤さんのガッツポーズのほうがデカかったですからね(笑)。小澤さんのことを、僕は征悦の“征”から、“せいちゃん”って呼んでるんですけど、思わず「せいちゃん、ナイスだったね!」と伝えました。最後の対決のシーンもね、オチは言えませんけど、小澤さんの表情がとってもいい! 「あっぱれ!」と思いました。