「長期投資は短期投資より儲かる」は間違い?改めて知っておきたいメリット・デメリット【株式投資のプロが解説)
ここぞという会社の株を買って保有し続ける“長期投資”は、「投機」ではなくまさに「投資」をしている感覚があるでしょう。「投資は短期より長期がいい」という意見も数多く見られます。しかし、長期投資がすべての面において優れているかといえば、そうともいえません。今回は、株式会社ソーシャルインベストメントの川合氏があらためて長期投資のメリット・デメリットを整理するとともに、どんな状況に適しているのかを解説していきます。 【早見表】年収別「会社員の手取り額」
長期投資のメリットとデメリット
まず、長期投資のメリットとデメリットを一覧にしてみましょう。 長期投資のメリット 売却時手数料の支払いを先送りできる売却益にかかる税金20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%、2024年現在)の支払いを先送りできる所得税に応じた健康保険料増加分の支払いも先送りできるうまくいけば株価も配当も大きく上がる長期投資のデメリット 配当以外は現金化できない下手をすると株価も配当も大きく下がる手数料・税金・健康保険料の負担を考慮しても売った方が大きな利益となる場合もある
「手数料」「税金」「健康保険料」の負担減が長期投資最大のメリット
「短期投資よりも長期投資の方が儲かる」とは一概にはいえません。銘柄選びと買い値によるからです。むしろ長期投資の最大のメリットは、手数料と税金と健康保険料の負担が減ることではないでしょうか。 ここで、シミュレーションをしてみましょう。100万円を元手に、10年間複利で10%の運用益を出し続けるとします。そして、売却益を得ながら1年ごとにそのうち30%を手数料・税金・健康保険料として支払う場合と、10年経った時点で初めて売却して30%の手数料・税金・健康保険料を支払う場合を比較してみましょう。 なお、30%というのは概算です。手数料は証券会社ごと、健康保険料も総収入によって異なるため、ここでは仮定として合わせて30%とします。また、小数点第三位以下は四捨五入して計算しました。結果は[図表1]のとおりです。 *1年ごとに手数料・税金・健康保険料を支払う場合 183.87万円(10年目の年初元本)+12.87万円(10年目の最終利益)=196.74万円(11年目の年初元本) 196.74万円-100万円=96.74万円(10年間の最終利益) *最終年に一度だけ手数料・税金・健康保険料を支払う場合 100万円(1年目年初元本)×1.1(年10%の運用)^10(複利で10年)=259.37万円 259.37万円-100万円=159.37万円(10年間の運用利益) 159.37万円-47.81万円(30%の手数料・税金・健康保険料)=111.56万円(10年間の最終利益) それぞれの「10年間の最終利益」に注目してください。1年ごとに手数料・税金・健康保険料を支払う場合は96.74万円ですが、最終年に一度だけ手数料・税金・健康保険料を支払う場合は111.56万円になります。 年に10%という同じ運用利率でも、実際に得られる利益は15%以上変わってしまうのです。ここに、長期投資の大きなメリットが見出せるでしょう。そして年数が伸びれば、その差はさらに大きくなっていくのです。