じつは前回の「南海トラフ巨大地震」から、すでに316年が経過しているという「恐るべき事実」
地震は一度で終わらない場合
その白鳳地震からの1339年間に、南海トラフでは主な大規模地震が13回発生している。単純計算すれば平均103年に1回の割合で南海トラフ地震が発生していることになる。その13回のうちの8回(約60%)は、東海地震などの後に南海地震が連続して起きている。たとえば永長(東海)地震の2年2か月後に康和(南海)地震、正平(東海)地震の同日か2日後に正平(南海)地震、安政(東海)地震の翌日に安政(南海)地震、昭和(東南海)地震の2年後に昭和(南海)地震が発生している(1-(4) 図参照)。 このことから東海地震などの固有地震が起きると、同じ南海トラフ沿いの南海地震などの別の固有地震を連動又は誘発してきたものとみられている。つまり、南海トラフで起きる地震によっては、一度で終わらない可能性もあるということ。ただ、最初の地震から次の誘発又は連動地震までの時間差には幅があり、必ずしも一様ではない。 一方で、1854年の安政東海地震以降169年間、その固有領域で東海地震が発生していない。その間に、安政東海地震の90年後に昭和東南海地震(1944年)が、92年後には昭和南海地震(1946年)が発生している。東海地震の169年間に及ぶ沈黙はいったい何を意味するのか、今後、東海地震が引き金となって、他の地震が誘発させたり、南海トラフ全体で巨大地震が連動して引き起こす可能性も否定できない。
大地震×大津波×噴火
過去の南海トラフ地震では、一つの地震が次の地震を連鎖的に誘発してきただけでなく、南海トラフ全体が同時又は短い時間差で連動してずれ動いたこともある。1707年の宝永地震は、南海トラフ全体が同時又はわずかな時間差で動いた「江戸時代の南海トラフ巨大地震」と推定されている。固有地震の多くは一つあたりM7.9~8.5のエネルギーであるのに対し、宝永地震はM8,6~9.3の超巨大地震だったと推定されている。となると、前回の超巨大地震(宝永地震)からすでに316年間、南海トラフ全体では動いていないことになり、次の南海トラフ巨大地震はすでにカウントダウンが始まっているとする説もある。 過去の南海トラフ地震で共通しているのは、日本書紀の白鳳地震の記載にもあったように、大揺れの後に大津波が押し寄せることである。そして、犠牲者の多くが津波によるとされている。中でも宝永地震は東海道沖から南海道沖の広い範囲を震源とした南海トラフ全域のプレート間断層が破壊された日本最大級の超巨大地震と推定され、想定されている南海トラフ巨大地震の被害想定を見ると、最悪の場合は宝永地震の再来ともいわれる大惨事になる可能性がある。その宝永地震の49日後には富士山が宝永の大噴火を起こし江戸にも降灰があった。次の南海トラフ巨大地震発生時に富士山が連動して噴火しないという保証はない。最悪の複合災害への準備も必要になる。