ほぼ「完全に新しい」 アウディ S e-トロン GTへ試乗 ポルシェ共同開発のアクティブサス獲得
めっぽう速い680ps 新サスペンション獲得
さて、ドイツの公道へ出てみると、先述の通り680psだからめっぽう速い。バッテリーEVらしく、太いトルクが即座に立ち上がる。 トップモデルのRSパフォーマンス e-トロン GTには、より緻密にパワーを分配し、鋭い加速を生むモードも備わるが、その必要性を感じないほど。欲した時に求めれば、不満ない速度上昇を召喚できる。 ダイナミック・モードを選択すると、リアアクスルの2速ATがシフトダウンするのがわかる。あえて、メカニカルな感触を与えているのだろう。 ブレーキペダルの印象は、大幅に良くなった。それでいて、回生ブレーキの強さも290kWから約400kWへ強化されている。 こんな動力性能もさることながら、アップデート後のe-トロン GTで最大のトピックが、ポルシェと共同開発されたアクティブ・サスペンション。電動アクチュエータで、ダンパー内のフルードの流れと圧力を変化させるシステムだ。 ドアを開くとボディが70mm持ち上がり、乗降性を良くしてくれる。もし不要なら、オフにもできる。 カーブへ侵入すれば、ボディを僅かに傾けることで、ボディロールを最大2度まで相殺。加減速時は最大25mm、前後方向のピッチを抑えてくれる。全体の上下動、スクワットも同様だという。 運転していると、その仕事ぶりを明確に実感できるわけではない。とはいえ、乗り心地が素晴らしいことは間違いない。波長の長い揺れはしっかり抑え込まれ、不思議なほどフラット。メルセデス・ベンツSクラスより上質かも。
アウディらしい高速バッテリーEV
21インチ・ホイールを履いていても、低速域での制御は見事。歩道の段差を超えても、 揺れを殆ど車内へ伝えない。高速道路では、陥没部分や隆起部分を平然といなす。魔法のような技術だ。 僅かにクイックになったステアリングは、最新サスペンションと相乗し、一層レスポンシブ。同時に安定性も高く、トラクションは濡れたアスファルトでも揺るぎない。 ドライバーが意図すれば、テールを外に流すことも可能だが、きっかけを与えない限りタイヤは路面を掴み続ける。トラクション・コントロールを弱めなければ、どんなにアクセルペダルを蹴飛ばしても、グリップを保ち一心不乱に突進し続けるようだ。 ちなみに英国仕様の場合、アクティブ・サスペンションはフォルシュプルング・グレードのみ実装可能。それ以外では、従来のアダプティブ・エアサスペンションの改良版が組まれる。 S e-トロン GTでフォルシュプルングを指定すると、英国価格は13万ポンド(約2496万円)に達する。後輪操舵システムなど、多くの機能も盛り込まれるが。 アップデートを受けた、e-トロン GTの第一印象はかなりイイ。新しいハードウエアが、アウディらしい高速バッテリーEVを完成させたように感じた。 ◯:大きなサイズでありながら驚異的な公道での速さ 洗練されたアクティブ・サスペンション 従来以上の航続距離と急速充電能力 △:ロータス・エメヤより狭めのリアシート ベース仕様でも11万ポンド(約2112万円)に迫る英国価格
アウディ S e-トロン GT(欧州仕様)のスペック
英国価格:10万7730ポンド(約2068万円) 全長:4997mm 全幅:1964mm 全高:1389mm 最高速度:244km/h 0-100km/h加速:3.4秒 航続距離:601km 電費:5.4km/kWh CO2排出量:- 車両重量:2310kg パワートレイン:ツイン永久磁石同期モーター 駆動用バッテリー:105kWh 急速充電能力:320kW 最高出力:680ps 最大トルク:75.3kg-m ギアボックス:1速リダクション(前)+2速オートマティック(後/四輪駆動)
リチャード・レーン(執筆) 中嶋健治(翻訳)