【ネタバレレビュー】“光”と“闇”の表裏を真っ向から描いた「スター・ウォーズ:アコライト」最終話、シリーズを揺るがすフィナーレへ
ディズニープラスで独占配信中の「スター・ウォーズ」オリジナルドラマシリーズ最新作「スター・ウォーズ:アコライト」。『スター・ウォーズ/ファントム・メナス(エピソード1)』(99)の約100年前、ジェダイの黄金期、 “ハイ・リパブリック”と呼ばれる平和が守られていた時代に起きた、ジェダイ連続殺人事件の謎に迫る物語だ。ジェダイの犯した罪の全貌が明らかになったいま、フォースを宿した双子たちがたどる道とは?衝撃の展開で幕を閉じる最終話となった第8話をレビュー。 【写真を見る】元ジェダイだったカイミールのマスターは…ヴァーネストラ・ロウだった! ※本記事は、ネタバレ(ストーリーの核心に触れる記述)を含みます。未見の方はご注意ください。 ■闇にうごめく不穏な存在…真の黒幕が存在するのか? ディズニープラスで「スター・ウォーズ」の実写版のオリジナルドラマシリーズが始まったのが2019年。以来、数多くの作品が世に送りだされてきたが、この「スター・ウォーズ:アコライト」は、もしかしたらもっともコントラバーシャルなドラマかもしれない。これまで映像化においてはほぼ手つかず状態だった『ファントム・メナス』から約100年前のハイ・リパブリック時代におけるダークサイドを描いているからだ。当時はまさにジェダイ・オーダーの最盛期。共和国に平和をもたらすと同時に権力も手中に収めていた。では、彼らは銀河において、常に平和の使者だったのだろうか? そんななか、ついに迎えた最終話で明らかになるのはジェダイの脆さだった! というわけで、これまで観たことのない「スター・ウォーズ」であり、情報量が多かったことも手伝って、果たしてどう収束させるのか、ドキドキしながら最終話を迎えたわけだが、結論から言ってしまえば、そのラストはなるほど!と思えるもの。失意と希望、どちらとも見せてくれたからだ。 前回の第7話は、双子のオーシャとメイ(共にアマンドラ・ステンバーグ)の生まれ故郷の惑星、ブレンドクで起きた16年前の事件「ブレンドクの火災」の“真実”を描くものだった。公にはメイが砦に火を放ったせいで、双子の母親を含む魔女全員が死亡したということになっていたが、実際はソル(イ・ジョンジェ)が母親を殺してしまったこと、ジェダイ・マスターのインダーラ(キャリー=アン・モス)が反対しても、まだ弟子のいなかったソルがオーシャを弟子にすると言い張ったこと、そしてそれらの事実を彼らが封印してしまったことが判明。さらに、ブレンドクには「フォースの集中」があり、双子は双子として生まれたのではなく、実はひとつの意識をふたつに裂いた結果だということもわかる。こうした様々な驚くべき真実が明かされたいま、どうやって物語は収束に向かうのか? 最終話のファーストシーンは第6話の続き。“シス”を匂わせるカイミール(マニー・ジャシント)の隠れ家で、コルトシスで作られた彼のヘルメットを被ったオーシャの姿から始まる。シリーズファンならダース・ベイダーを思い出すわけで、初っ端から、もしかしてダークサイドに転ぶのはメイではなくオーシャのほう?という予感がしまくってしまう。 そうなのだ。本作のテーマはいわば“表裏一体”。ひとつの意識から作られた双子を主人公にすることで、我々が持つ二面性を明らかにしようとしている。善だと思っていた者が悪へと向かい、善を行うために悪を行う。光と闇が交じり合ってグレーゾーンが生まれるように、人間もジェダイも勧善懲悪にはなりえないということ。本作の第1話が痛快な勧善懲悪の物語で始まったことを考えると、やはり驚くべきストーリーだと言えるではないだろうか。 そうそう、もうひとつチェックしておかなくてはいけないのは、カイミールとオーシャが惑星を出立する時、洞窟の影からその姿を見守る怪しすぎる影。シワだらけで黄色い目の不気味な男の突然の登場に、これは一体何者?という人も続出だろうが、どうもダース・プレイガスではないかと言われている。なぜそう考えられるかと言えば、『スター・ウォーズ/シスの復讐(エピソード3)』(05)でプレイガスの弟子だったパルパティーンことダース・シディアスがアナキンに「彼は生命を作りだすことができた」と発言していることから、もしかしたらオーシャとメイの創造に関係していた?と思ってしまうからだ。それに、カイミールのいるこの惑星、名前が明らかにされていないのも気になる。これまでのエピソードに「Unknown Planet(未知の惑星)」というような表記はなかった。これはどんな意図?ダース・プレイガスに関係しているのか? ■最終話にふさわしい圧巻のバトル!そして衝撃のフィナーレへ オーシャとカイミール、ソルとメイがそれぞれ向かったのはブレンドク。ほぼ毎回、激しいバトルシーンが用意されているのも本作の特徴の一つだが、今回はブレンドクで2つのバトルが同時進行する。一つはメイとオーシャ、もう一つがソルとカイミール。オーシャの言葉から、彼女がなぜジェダイ・オーダーを去ったのかが明らかになる。「メイを憎んで、ママの死を嘆き続けた」からジェダイを失格になったのだ。メイを憎んだのは、彼女の放った炎が母親を死なせたと思っていたからなのだが、メイの告白で実はソルが母親を殺したことが明らかになる。 一方、バトルを続けるソルとカイミールはまさに互角のパワー。カイミールの赤いライトセーバーが大小2つに分れ、まるでブーメランのようにソルを襲う!この機能も初めてだが、それ以上に驚かされるのはそのあと。ソルが実は母親殺しの真犯人だったことを知ったオーシャが、彼のライトセーバーを手にするとカイバークリスタルの色が、あたかも出血したかのように赤く染まりだす。さらに、フォースの力のみでソルを殺してしまうのだ!カイミールが自分のアコライト(侍者)に求めていた「武器なしでの闘い」をメイではなくオーシャのほうが実行してみせたことになる。もちろん、シリーズファンならもう一つ、弟子が師匠を手にかけるというジェダイの影の慣例(?)にも着目しなければいけない。 放心状態となったオーシャにカイミールが近づくと、彼女は拒否するようにライトセーバーを振りかぶってみせるが…みるみるうちに、ブルーのセーバーはレッドへと変化。シスのブレイドが赤いのは、カイバークリスタルがダークサイドのフォースによって破壊されたからだが、それを映像で表現したのは初めて!つまりこれも、物事の二面性。正義はずっと正義ではなく、それを行う者の心の変化によって違う顔を見せるということ。ジェダイもシスに転向する可能性は決して少ないわけではないと言っているのだ。 それにしても本作は、死亡者が驚くほど多い。第1話の冒頭でインダーラが殺されたことを皮切りに、トービン(ディーン=チャールズ・チャップマン)、ケルナッカ(ヨーナス・スオタモ)ときて、ジェキ・ロン(ダフネ・キーン)とヨード(チャーリー・バーネット)も殺され、最後にソル…。復讐譚だとはいえ、メインのキャラクターがこれだけ死ぬシリーズも珍しいのではないか。 ■ここに来てヴァーネストラ・ロウがダークホースに? さて、そんな凄まじいことになっているブレンドクにやってくるのは、これまでコルサントにいることの多かったジェダイ・マスターのヴァーネストラ・ロウ(レベッカ・ヘンダーソン)とその一行。彼女は星に降りるやいなやカイミールの存在を感知し「お前、生きていたか」と呟く。カイミールはロウのパダワンだったのだ!だからソルに「俺を覚えてないのか」と訊いたのかもしれない。 メイとオーシャ、そしてカイミールはブレンドクを離れることにするが、カイミールはジェダイの追跡を逃れるため、メイの記憶を消して星に残し、姉の解放を条件に訓練することを選んだオーシャをアコライトとして迎え入れる。第1話と真逆の状況になったのだ。が、驚くべきはこのあとのロウの選択のほうだろう。8歳の時の記憶しかないメイをコルサントに連れて来て、こういうのだ。「あなたの母親を殺したのはジェダイだった。心優しく、聡明で思いやりのある人。でも、罪を犯した。その過ちに苛まれ、心が歪んでしまった」。 そしてまた、ロウは最高評議会の席でもブレンドクの事件をこう報告する。「16年前、4人のジェダイが惑星ブレンドクに駐留し、魔女のフォース・カルトを発見。争いが起こり、大勢が犠牲に。4人は共謀し、その行為を隠した。最近、その真実が露見しかけ、汚れたジェダイのソルが共犯者を殺し保身を図った。ソルの行為を糾弾する」。 さらに、外部調査を開始するという意見に対して「これはひとりの堕落した男が起こした悲劇。彼は罪を犯したブレンドクで死んでいた。おそらく自殺かと」。 いや、もう観ているほうは、あの善良の塊のようなソル、犯した罪のせいで苦しみまくっていた彼をここまで貶めるのかと悲しくなるほど。しかも、それをソルがもっとも信頼していただろうジェダイが口にするのだからいたたまれない。もちろん、ジェダイの名誉と権威を守るために敢えて行った改ざんであり、横たわるソルの遺体に「許してくれ」とも言っている。が、それでも、ソルのこの扱いには胸が痛くなってしまうではないか! ■ラストシーンにはファンの見慣れた後ろ姿が… 多くのファンがここで失意を抱えるわけだが、ドラマはそこで終わってはいない。決意を新たにしたカイミールとオーシャを映したあと、ロウは「失礼しますマスター。ご相談が」と言ってある部屋に入るのだが、そこにいたのはなんとヨーダ!お馴染みの、あのヨーダの後ろ姿が映しだされる!考えてみれば『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還(エピソード6)』(83)で亡くなった時は900歳くらいだったわけだから、この時代に生きているのは当然と言えば当然、『ファントム・メナス』よりも100年前のせいか、白髪の量も多めになっているのもポイントだ。 さらに、本作が物事の二面性を描いていることを考えれば、洞窟の謎の男が最強のシス、ダース・プレイガスなら、最強のジェダイ・マスター、ヨーダが登場するのも納得がいく。しかし、ここでもっとも重要なのはヨーダが私たちに“希望”を与えてくれるということ。この悲劇的な状況で懐かしいヨーダの姿を目にして、ファンはやっと笑みをこぼす。「スター・ウォーズ」ギャラクシーを支え続けて来たヨーダには、そんな“フォース”があるからだ。 それにしても、失意と希望、最後にこの2つの相反する感情を視聴者に抱かせるとは!次が気になって仕方ないではないか…。ショーランナーのレスリー・ヘッドランドは「シーズン3まで続けたい」と発言しているというが、果たして⁉ 文/渡辺麻紀
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