英国が新潮流を作るデザイナーを輩出し続ける理由 若手発掘の第一人者サラ・モワーに聞く
彼女は現在ロンドンのデザイン・ミュージアムで開催中の「ニュージェン」の設立30周年を記念した企画展「REBEL: 30 Years of London Fashion」のゲスト・キュレーターを務め、その歴史を紹介している。
いち早くサステナビリティに取り組む若手デザイナーたち
モワーは企画にあたり「若いデザイナーたちがファッション産業による環境破壊や廃棄物に対して、真っ先に意義を唱え始めていたことが明らかになりました。サステナビリティについてファッションコースを有する大学で教えられるよりもずっと前です。サステナビリティがカリキュラムに加えられるようになったのは、大学がけん引したのではなく、学生の圧力によるものでした」と振り返る。同展では、アートスクールの教育に焦点を当てた展示ブースもある。
「若者たちは私たち業界の長老たちに、私たちが彼らに教えるのと同じか、それ以上のこと、特にこれからのことを教えてくれます。例えば、クリストファー・レイバーン(Christopher Raeburn)は2009年、軍用パラシュートのデッドストックからコレクションをアップサイクルした最初の人物です。オルソラデ・カストロ(Orsola De Castro)は10年、ロンドンで初のエシカルファッションの展示会“Esthetica”を立ち上げました。15年前といえば、気候変動に関する会議や環境に関するファッション協定がまだなかった頃です。当初、彼らが理想主義者で世間知らず、さらには業界を批判するトラブルメーカーだと見下されたり、軽蔑されたりしていたことを鮮明に覚えています」。今でこそ、サステナビリティはデザインやビジネスの根底に据えるべきことになっているが、当時はまだまだ否定的だったことがわかる。「ニュージェンに参加したデザイナーたちは、スローガンTシャツを着ているというよりも、彼らは常に建設的です。問題を解決するために創造的に新しいシステムを考案し、自分たちの仕事のやり方を透明化し始めた最初のデザイナーたちでした。また、サプライチェーンにおける労働者の待遇や、グローバル・ノースによるグローバル・サウスへの繊維廃棄物の投棄をめぐる問題を提起しました」。