“9日間一睡もしなかった”コカイン最長覚醒記録を持つキース・リチャーズを救った少女…ロックスターのイメージを創った男が無実になった日
生きる伝説、ザ・ローリング・ストーンズのギタリストのキース・リチャーズ。若い頃から酒とドラッグに溺れていた彼は1978年についに薬の違法所持で告発され、窮地に立たされた。そんな彼を目の見えない少女が救ったのだが、絶望の淵にいたキースに一体何が起きたのか。 【画像】今年81歳になるキース・リチャーズ
「行け! キース!!」ロックスターの責任感
ローリング・ストーンズのキース・リチャーズにとって、1970年代のある時期は、音楽よりもドラッグが中心の生活だったに違いない。 ストーンズが70年代に発表したスタジオアルバムが、すべてチャートの1位を記録したこともすごいが、キース個人はさらに9日間一睡もしなかったというコカイン最長覚醒記録や、ニュー・ミュージカル・エクスプレス誌の「次に死にそうなロックスター」ランキングで10年連続1位という大記録も所持している。 トップから落ちた時はがっかりして「しまいには9位まで落ちた。何てこった、もう死にたくなったぜ」と本人はジョークを飛ばした。 キースのドラッグ生活は、警察との闘いの日々でもあった。キース自身の言葉を借りるなら、それは「権力vs庶民」ということになる。 ロックスターのイメージを創った男としての責任感だろう。彼は世界中のファンの「行け! キース!!」的な期待を、決して裏切ることはなかった。 1977年2月、キースを除くストーンズのメンバーやスタッフは、カナダのトロントに集まっていた。ライブ・アルバム『Love You Live』収録用に、エル・モカンボ・クラブでギグを行うのだ。 しかし、キースだけがやって来ない。連絡もつかない。業を煮やしたメンバーは電報まで打った。 「俺たちはプレイしたい。お前もそうだろ? 一体どこにいるんだ!」 やっとのことでカナダの空港に到着するも、まずはアニタ・パレンバーグ(事実上の妻)の所持品に薬物が付着したスプーンが見つかって逮捕。 そして宿泊先のホテルでは、スイートルームのベッドでいつものように倒れ込んでいたキースの顔を、警察は何度も平手打ちした。 45分後にキースは“目覚め”て逮捕連行。大量のブツが発見され、警察は転売目的による麻薬の違法所持で告発することに決めた。 ちなみにキースはこの時、テープレコーダーの使い方に戸惑っている取調官に、ご丁寧にも使い方を教えたそうだ。 さらにタイミングの悪いことに、当時のカナダのトルドー首相の若妻マーガレットが、ストーンズが宿泊するホテルでバスローブ姿になっているところを報道されてしまう。 まだ20代だった彼女は、夫と別居したばかりで解放的だったのか、メンバーのロン・ウッドと“短い時間に特別なものを共有”した。 これによって、ストーンズ潰しに拍車がかかった。警察がターゲットに絞ったのは、言うまでもなくキースだった。 「グルーピーになりたいなら、首相の妻になるのはやめた方がいいぜ」