「僕は高校日本代表に選ばれないと思います」大阪桐蔭から完投勝利をあげたプロ注目投手の”衝撃発言”、その背景にあったのは……!?
6月8日に徳島県阿南市のJAアグリあなんスタジアムで開催された「徳島県高野連招待試合」。地元の期待を一身に背負った阿南光の「1」吉岡 暖投手(3年)は高校日本代表候補の名にふさわしい……。いやそれ以上の貫録を示した。 【動画】新興勢力・阿南光に密着 高校日本候補強化合宿で同じ釜の飯を食った大阪桐蔭の最速154キロ右腕・平嶋 桂知(3年)に投げ勝っての122球無四死球2失点完投もさることながら、直球主体の序盤から変化球主体に切り替えた3回以降毎回の9奪三振。改めて全国トップクラスのゲームメイク力を見せつけたのである。 ところが……。 「初球から力の違いを見せつけられました」 吉岡は、まるで負け投手のようにニコリともせず投球を振り返りはじめた。さらに深掘りしてみると、反省の理由は初回にあった。 「1番の境(亮陽外野手・3年)君に初球のストレートを右中間フェンス直撃の三塁打を打たれて、自分のレベルが解りました。確かに中盤からは変化球を多くして抑えられましたが、もっとストレートで抑えられないと。この対戦をいい経験として反省を次に活かさないといけないです」 ストレートの質に自信を得つつあるからこそのあくなき向上意欲。髙橋 徳監督はそんな吉岡の反省の根拠をこう話す。 「球速も先日の総体協賛ブロック大会で自己最速タイの146キロが出ました。ラプソード測定でも2200~2300回転・回転効率95%が出ています」
直球派へのモデルチェンジはまだ道半ばの半面、「1球1球が成長につながったと思う」と指揮官も語ったように、大阪桐蔭と対戦したからこそ得たものは大きかった。 「大阪桐蔭と対戦して改めて、夏にもう一度甲子園に行きたい気持ちが強くなりました。2年前の高野連招待試合でも森山(暁生投手・中日22年3位)さんが天理(奈良)にここで投げ勝って、少しチームの雰囲気が緩んでしまったことで夏に初戦敗退した苦い思い出があるので、チームとしてももう一段階レベルアップしたいです」 もちろん、その先にあるのは高校日本代表入りかと思いきや、吉岡はあえてその想いを断ち切っていた。 「境くんは当然選ばれるでしょう。投手陣も高尾(響投手・3年=広陵)、今朝丸(裕喜投手・3年=報徳学園)くんも平嶋くんもいるので、僕は選ばれないと思います。まずは甲子園です」 そう、甲子園に戻ることができれば、その先のことは周囲が決めること。すでにプロ志望1本に絞った阿南光、いや「野球のまち阿南」の希望の光は、夏、さらに秋の歓喜をつかむため、「春夏連続甲子園出場」へまい進する。