暗号資産、アジアにはチャンスが眠っている
暗号資産(仮想通貨)の世界では、アメリカと米証券取引委員会(SEC)の動向が注目されている。特にビットコインETF(上場投資信託)が承認されて以来、その傾向は顕著だが、それも当然だ。 アメリカの政策と経済は世界に大きな影響を与え、その政策に賛成するしないにかかわらず、同国の資本市場の広さと深さを考えると、アメリカは機関投資家への暗号資産の普及と成長において重要な役割を果たし続けるだろう。 アジアで起きていることは、アメリカにはあまり伝えられないが、暗号資産のユースケースの拡大とともに、機関投資家への普及も進んでいるようであり、より包括的な金融システムを目指す他の地域もモデルとなり得る。
アジアにおける機関投資家への普及拡大
投資、ユーザーエンゲージメント、プロダクトの拡大、政府の取り組みなどから、アジアは暗号資産のイノベーションと普及のハブであることが証明されつつある。 例えば、ブータンでは最近、ビットコインマイニング施設を拡張するために5億ドル(約750億円、1ドル150円換算)が投資された。 シンガポールでは、機関投資家の75%が2024年にデジタル資産への配分を増やす予定だと回答している。香港では、Harvest FundsやVenture Smart Financial Holdings(VSFG)がビットコインETFを申請する意向を表明している。 規制面では、シンガポール、日本、香港、韓国がセキュリティ・トークンに関する規則を明確化するための措置を講じている。 さらに、シンガポールのDBS銀行、HSBC、韓国のハナ銀行などの金融機関は、いずれも暗号資産を推進する動きを取っている。
アジアにおける暗号資産の普及と日々の利用
チェイナリシス(Chainalysis)の「The 2023 Geography of Cryptocurrency Report(2023年版 暗号資産の地理学レポート)」から抜粋すると、中央・南アジアおよびオセアニア(CSAO)では暗号資産市場が急成長しており、世界で最もダイナミックな市場となっている。取引高を見ると、CSAOは北米、中央・北・西ヨーロッパ(CNWE)に次ぐ第3位につけている。 アジアのDeFi(分散型金融)を例にとると、2022年7月から2023年6月までのCSAOの取引高に占めるDeFiの割合は55.8%で、前年の35.3%から20%以上急増した。 また、CSAOは購買力でも圧倒的だ。上位10カ国のうち6カ国をアジア太平洋地域で占めた。インド、ベトナム、フィリピン、インドネシア、パキスタン、タイだ。 これらはすべて、アジアにおける暗号資産と、暗号資産の金融システムへのインテグレーションに大きなチャンスが広がっていることを示している。 成長の可能性の一例として、タイには7100万人以上の人々が住んでいるが、そのうちの約16%はまだ銀行口座を持っていない。つまり、住民の大多数が銀行システムを利用しているにもかかわらず、金融サービスへのアクセスから除外されている人々がまだ相当数存在する。 暗号資産に対する需要が存在し、人々が暗号資産を採用し、やり取りするにつれて、このようなエンゲージメントの増加は、人々が銀行を利用する方法に大きな影響を与える可能性を秘めている。アジアの発展途上市場における暗号資産の実用的な個人向けユースケースは、先進国で見られる機関投資家への普及と歩みを合わせていくだろう。